企業研究・(株)はせがわ~業界最大手の将来性は?(後)
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「おててのしわとしわをあわせてしあわせ」のCMで有名な(株)はせがわ。仏壇・仏具業界において、業界の最大手として著名である。しかし、現代社会の価値観の変動により、顧客の仏壇・仏具購入は下降傾向にある。今後、同社は事業を大きく方向転換するのであろうか。
200億円を割り込む売上高同社の売上高は、直近4期において200億円台を推移し14年3月期は216億3,702万円の売上高を計上し上昇傾向となった。だが、15年3月期は193億1,499万円の売上高で200億円を割り込んだ。利益面でも営業利益10億3,547万円(前期比▲58%)、経常利益10億2,532万円(同比▲60.7%)、当期純利益4億1,589万円(同比▲73%)と大幅な減益となった。その要因は、仏壇・仏具販売前期比10.7%減、墓石販売は前期比16.3%減と同社の中核商品の販売減少である。同社は、「近年の低価格・節約志向、生活様式や価値観の変化による購入商品の小型化・簡素化」と分析している。
財務の留意点として有利子負債計は51億6,166万円で14年3月期より8億4,888万円増となっている。有利子負債依存率は29.3%と前期と比較して5%上がっているものの、負担感は重くないだろう。自己資本比率は53.89%と安定している。
同社は、福岡県創業の企業であるが、近年の業績においては東日本エリアでの売上高が中核となっている。東日本エリアにおける仏壇・仏具および墓石の売上高は144億1,155万円で同社売上高の74.6%を占める。関東地方がメインの納骨堂・屋内墓苑事業の8億8,000万円を合算すると、約80%の売上構成比となる。西日本エリアは、36億1,366万円で売上構成比18.7%。売上高の前期との増減率で、東日本は10.9%減に対し、西日本は18.4%減と西日本エリアでの販売実績の減少が大きくなっている。一方で、東日本での販売促進や新規出店は積極的に実践しているものの、現況その効果は、実績に反映されていない。
16年3月期の第2四半期の売上高は98億4,233万円で前年同期比1.6%減。同社は16年3月期売上高予想で201億円と、再び200億円台に回復する見通しを立てているものの、苦戦も予測される。
納骨堂・屋内墓苑で巻き返す?
14年6月に裕一氏は取締役を退任し、相談役となった。代表権のある会長には裕一氏の実弟の房生氏、社長は富士銀行(現みずほ銀行)出身の井上健一氏が就任した。長谷川一族以外からの代表就任は、創業以来初めてのケース。16年1月現在、同社の店舗数は関東、東海、九州・山口エリアで116店舗。国内業界最大手の地位は不動である。それでも、中核事業である仏壇・仏具および墓石販売は、下降をたどっている。仏壇一つをとっても、現代風にアレンジされたコンパクト型の仏壇が売れ筋で、価格が10〜20万円台の商品のラインアップが豊富だ。古来より金仏壇に代表される御堂の代わりとなるレベルの仏壇のニーズは、年々減少している。住宅事情やライフスタイルの変化により簡素化、低価格志向へ供養する手法がシフトしているのである。この流れはこれからも続く可能性が高い。
一方、同社の事業のなかで業績を上昇させているのが、納骨堂・屋内墓苑の事業である。東京都、神奈川県を中心に事業を展開し、同社売上高の5%にも満たないシェアであるが、15年3月期は前期比36.1%増と大きく伸ばしている事業である。この分野は、利便性に優れ、維持管理がし易く、新たな供養のスタイルとして関心が高まっている。
2代目の裕一氏の時代に発生した負の部分を、3代目の房生氏が立て直し、財務体質を健全化したとされる。その房生氏の右腕として事業再編に取り組んだのが井上氏だ。納骨堂・屋内墓苑事業は、以前のような同社の本業以外の事業展開でなく、本業の理念に沿った事業構築である。わが国の業界最大手の矜持を守り、今後の市場を活性化できるか。その鍵を握っているのは同社の納骨堂・屋内墓苑事業だろう。
(了)
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