2024年12月22日( 日 )

日本企業の進出こそがカンボジア国民の願い

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一般財団法人 カンボジア地雷撤去キャンペーン 理事長 大谷 賢二

 カンボジアの地雷被害者を何とかしたいという思いから「カンボジア地雷撤去キャンペーン(CMC)」を立ち上げて、今年で19年目を迎えます。
 もともと、それまでの旅と同じく、ツアーではなく、自分の足で歩き現地の人と触れ合うことによって「世界を知り何かを得たい」という思いで入ったカンボジアでしたが、その印象は強烈なものでした。町でも村でも市場でも世界遺産のアンコールワットの敷地内でも、ボロ着をまとい地面を這いまわる足のない人、子どもに手を引かれて物乞いをする目の見えない人など、多くの障害を持った人に出会わない日はありませんでした。それが、地雷被害者であるということがわかってからは、義足センターや地雷撤去団体を廻り、聞き取り調査を行いました。その結果が、100円玉1枚で1m2の地雷原をクリーンにできるという「100円キャンペーン」や、3,000円で膝から下の義足を提供できるという「被害者支援プロジェクト」でした。

CMCが支援する子どもたち。(左)タエム・レアカサー君、(右)ミエン・クンティアさん<

CMCが支援する子どもたち。(左)タエム・レアカサー君、(右)ミエン・クンティアさん

 その当時、カンボジアだけで1,100万個と言われていた対人地雷も、現在は約400万個と言われ、1998年に1,685人だった地雷被害者は、2012年には186人と9分の1にまで減ってきています。これは、活動を続けてきた者として喜ばしいことでありますが、地雷問題はそれで解決したとは言えません。これまでのカンボジアにおける地雷被害者累計は約6万5,000人にも上り、これは世界的に地雷被害の多い国と言われるアフガニスタンやコロンビアの4倍以上であり、被害者大国であることには変わりがありません。

 一方で、ここ数年の首都プノンペンを中心とした経済発展は目覚ましいものがあり、04~07年は、日本の高度経済成長期を上回る2ケタ成長を遂げています。昨年14年も7.18%の伸びを示しています。1人当たりのGDPも98年の253ドルから、14年には1,116ドルと大幅に増え、首都圏には高層ビルが建ち、レクサスなどの高級車による渋滞も起こっています。主要幹線道路は舗装され、ほとんどの人が携帯電話を使用し、インターネットはWi-Fiフリーでどこからでも接続できます。

 ですが、この急激な変化から取り残されてきたのが、地雷原を筆頭に、タイ国境付近の過疎地です。教育面でも、プノンペンでは受験戦争が始まっているというのに、農村部では小学校か中学校卒の先生が、子どもたちに都市部と同じ教科書を使って授業をしています。おそらく、先生すら理解していないものが、子どもにわかるはずもありません。地雷原の学校では、小中学校の入学率が100%に近づいてきていますが、貧困のため、親の手伝いや隣国への出稼ぎに行き、卒業するのは約半数しかいません。そうして生まれた学力の差は、就業、給与の差となって表れ、都市部と農村部、健常者と地雷被害者の格差は広がる一方なのです。
 貧富の格差は、あらゆる問題の温床となります。「イスラム国」の問題は、決して他国の問題として座視できることではないのです。今後、カンボジア地雷撤去キャンペーンは、地雷原の村での教育支援、とくに卒業し進学するための奨学金制度や、村人や地雷被害者が安心して働ける就業の場の提供などに力を入れていこうと考えています。

 相手の立場に立って仕事の場を提供する日本企業の進出こそが、カンボジア国民の願いであることを知っていただきたいと思います。(談)

<INFORMATION>
一般財団法人 カンボジア地雷撤去キャンペーン
代 表:大谷 賢二
所在地:福岡市早良区西新1-7-10
TEL:092-833-7676
URL:http://cmc-net.jp

<プロフィール>
ootani大谷 賢二(おおたに けんじ)
1951年、福岡市生まれ。九州大学法学部卒。98年5月、NGOカンボジア地雷撤去キャンペーン結成。08年12月、アジア人権基金より「アジア人権賞」を日本人として初受賞。11年4月、一般財団法人カンボジア地雷撤去キャンペーンを設立、理事長に就任。

 

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