2024年12月23日( 月 )

人間は人工知能には勝てないのか?(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 最近韓国で行なわれた世界トップレベルのプロ棋士と人工知能の囲碁大局は世界の注目を集めた。グーグルが買収したイギリスの企業であるディープマインド社が開発した人工知能の囲碁プログラムのアルファゴ(Alphago)は、世界トップレベルのプロ棋士であるイ・セドル9段を相手に、果たして勝利できるのかどうかに世界は注目し。結果は4勝1敗でアルファゴの圧勝で終わり、世界に衝撃を与えた。

cyber_img 特に韓国企業は今まで人工知能に対して関心が低かったし、韓国政府も人工知能にあまり投資もしてこなかっただけに、人工知能について見直しを迫られている。人工知能は、1956年から技術開発がスタートしたもので、すでに60年の歴史がある。コンピュータが誕生して10年後から、人工知能の研究は始められた。コンピュータは人間より計算能力が優れているので、コンピュータのこの計算能力を旨く活用できれば、人間の能力を上回ることになるだろうというのがそもそもの始まりであった。勿論、最初から人工知能という名称があったわけでもない。

 人工知能は今回が3回目のブームと言われている。1回目のブームは人工知能と言う概念が誕生してから10年~20年の間である。この時期には人工知能のコアコンセプトが作られた時期である。2回目のブームは、コンピュータにデータをたくさん与えることによって、より高度なことができるようになった時期である。しかし、コンピュータにデータをたくさん与えることも、簡単なことではなかった。3回目のブームは、機械学習ができるようになった時期である。機械学習の中でも、ディープラーニングという新技術が実用化され、人工知能と呼べるようになった時期である。コンピュータが人間より計算能力が高くて、優れていることは分かっていても、人間のように判断するとか、推論するようなことはできなかった。人工知能はチェスとか将棋ではすでにトップレベルのプロ棋士と対戦してプロ棋士と対等かそれ以上の実力があることが認められた。

 しかし、囲碁はチェスとか将棋に比べて手数が多く、もっと複雑なので人工知能がプロ棋士に勝つのは、まだ10年くらい先だろうと思われていた。実際にイ・セドル9段は大局前の記者の質問に、自分は全勝するだろうと答えていた。負けるにしても1敗くらいだろうと本人は予想していた。回りもイ・セドル9段の天才姓を知っているだけに、そのような予想に頷いていた。しかし、結果は人工知能の勝利に終わり、人工知能がもたらす未来の展開に今急激に関心が集まっている。

 それでは、今までなかなか実現できなかった推論とか判断を、なぜコンピュータができるようになったのか。10年前までは、パターン認識と言って、コンピュータは似たようなことは認識できた。人間がコンピュータにたくさんの情報を提供することによって、コンピュータに判断力を持たせるレベルであった。即ちコンピュータに判断できる根拠になる特徴を教えないといけなかったわけである。人間は子供でも絵本で猫とか犬を教えてやると、すぐその特徴を自分で把握し、猫、犬を判断できるようになる。しかし、コンピュータは、今まではそれがなかなか実現できなかった。ところが、機械学習というコンセプトが登場し、人間がいちいちプログラムをしなくてもコンピュータがデータを蓄積していく中で、知識とかルールを見つけていくことができるようになった。特に機械学習の中でもディープラーニングという手法が誕生し、今までは人間が判断の基準になる特徴を抽出してコンピュータに提供しないといけなかったが、コンピュータが独自で特徴を抽出できるようになったのだ。

 今回のアルファゴは、囲碁に特化した人工知能プログラムであるが、人工知能が回答を見つけ、問題を解決する能力は、今後いろいろな分野に応用ができるようになるので、人工知能に企業の関心も高まっている。

(つづく)

 
(後)

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