人吉で愛され続ける球磨焼酎の造り手、繊月酒造(中)
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繊月酒造(株)
米焼酎の古酒
「芋焼酎などは新酒の方が美味しいと言われていますが、米焼酎は、貯蔵して美味しくなる酒質です。当社では、3代目杜氏の時代、50年ほど前から、毎年造られた原酒の中で最も良質なものを代々甕貯蔵しています。米焼酎は寝かせると、甘みと香りが増してフルーティになるのです。年代物の古酒は、口当たりが良くスーっと入りますが、後から芳醇な香りがふわっときます。癖の強い原酒ほど、変化に富んだ味になるそうです。また、当社では業界でいち早く樫樽貯蔵の研究を始めました。洋酒が入っていた中古樽ではなく、新樽から貯蔵し樫樽と米焼酎だけの味わいを追求しています」(堤氏談)。
甕貯蔵は、3代目杜氏、故・淋豊嘉 (そそぎとよか)氏の発案で始まり、同社で代々受け継がれているという。淋氏は、亡くなる前年の1978年に「現代の名工」として叙勲され、醸造の世界で初の卓越技能者として表彰された人物だ。
蒸留方法の進化
「焼酎は、端的に言うと、『もろみ』を熱して出た湯気で造られています。湯気に、アルコールや香りの成分が含まれているのです。昔ながらの高温で熱する蒸留は、最初にアルコール分と良い香りの成分が抽出され、その後に臭みや雑味などが出て来ます。現在、新しく開発された減圧蒸留が主流になり、原料特有の臭いや雑味が抑えられ飲みやすい焼酎が造れるようになりました」(堤氏談)。
焼酎の蒸留方法は大きく分けると2種類ある。高温でアルコールを抽出する常圧蒸留と、蒸留器の中を真空にして低い沸点で蒸留する減圧蒸留である。焼酎の蒸留器が進化を遂げたことで、時代にあった飲みやすい焼酎が開発された。昔ながらの常圧蒸留の焼酎は、原料の癖が強く出るため、一般に臭いという印象が強かったが、一方、新しい製法の減圧蒸留は、癖が抑えられすっきりとした焼酎になる。しかし、貯蔵して古酒とするには、常圧蒸留で造られた昔ながらの焼酎が向くという。癖と感じられた成分が、寝かせている間にまろやかになり、熟成されるのだ。
(つづく)
【村重 珠実】<COMPANY INFORMATION>
繊月酒造(株)
代 表:堤 純子
設 立:1950年10月
所在地:熊本県人吉市新町1
TEL:0966-22-3207
URL:http://www.sengetsu.co.jp/index.html日刊マックス流通のご案内
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