2024年11月25日( 月 )

中国経済新聞から学ぶ~全人代に見えた中国経済への希望

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 一年に一度「中国両会」(全人代と政治協商会議、日本の通常国会にあたる)が3月3日から16日の日程で、北京で開かれた。今回の会議の主な内容は、将来の社会と経済の発展を決定する「第13次五ヵ年計画」の審議と2016年度の国家予算である。しかし国内外の世論の注目は、中国経済の現状と未来の発展の趨勢、すなわち中国が世界経済をけん引するのか、落ちこぼれるのかということである。

china 今回の「中国両会」では、2016年の中国経済は2015年に比べさらに厳しいものとなることが浮き彫りとなった。中国国家発展改革委員会の徐紹史主任によると、その原因の一つは、世界経済の回復が緩慢であり、さらに不確定、不安定な要素が多くあって、それが一定期間持続するとみられ、中国経済や社会の発展に様々な影響を与える可能性があることである。第二は、中国金融市場が不安定で、多くの商品価格が下落し、地方政府のリスクも大きいこと。第三は景気減速の傾向が強く、工業品の価格が下落し、企業の利益が減り、財政収入が下がることである。

 中国財政部の楼継偉部長は、ここ数年財政収入の増加率は20%以上に達したが、2015年は6.5%減少し、2016年にはさらに減少すると予測した。しかし同時に国家の公共投資の支出額は増加し、今年は5,800億元(約10兆5千億円)の財政赤字が見込まれるという。

 李克強総理は記者会見で、中国人一人当たりの税率(所得税と年金など)はすでに30%に達しており、1万元の給料では手取りは7,000元で、3,000元が国に納めることになることが明らかになった。このような状況で養老年金を払えない地方都市も出始めている。李克強総理はさらに「世界経済は回復が遅れ、中国経済は深く世界経済に関わっているため影響や攻撃を受けやすくなっている。中国経済もまた変革の過程にあり、長期に積み重なった矛盾が露呈し、景気減速の圧力が大きくなりつつある」と公に認めた。

 では、中国経済減速の問題に解決はあるのだろうか。

 李克強総理は「中国経済は困難と希望が共存しており、希望は困難より大きい」と述べた。その理由として、中国市場は潜在能力が大きく、人民の創業、刷新の熱情は高く、政府がさらに制限を緩和すれば、中国経済全体に大きな活力が生まれてくる。さらに中国の就業状況は予想以上に良好で、昨年新たに地方で就業した人は1,300万人余り増えた。これは予想の30%増である。世界経済には不確定、不安定な要素も増えているが、しかし我々にも十分な政策の蓄えがある。昨年の世界経済はここ6年間で最低レベルの成長であったが、我々は7%前後の成長目標を実現した。さらに金のばらまき方式など過度な刺激策を取らず、困難だが持続可能な道を選択し、構造改革を推進した。中国経済は現在発展の過程にあり、小幅で短期の変動はあるが、我々には新しいマクロ的コントロール手段を持っており、中国経済の安定的運行が可能で、ハードランディングになることはない」とも語った。国家発展改革委員会の徐紹史主任は、中国政府には経済の対応ツールが準備されており、経済を減速させることはないと考えている。

 彼は記者会見で「私は中国の経済を見るにあたって、もはや伝統的、古い視覚で見ることなく、経済の新たな常態で中国経済を見るべきと考える。経済の新常態の核心とは、速度の変化、構造の変化そして原動力の変化に集約されるが、そこから見ると中国の2015年の経済は非常に明るいものといえる」と語った。

 第一、速度の変化。昨年の経済成長率は6.9%で、2014年に比べてさらに下がって6.9%になった。我々が確定した指標の7%前後にほぼ沿っている。同時に就業率は伸びており、予想目標の1000万人に対し1312万人に達した。収入の増加率は7.4%に達し、経済は合理的な範囲内で進んでいる。

 第二、市場構造は続けて良い方向に向かっている。需給の構造からみれば消費の貢献は投資を上回り、消費の貢献率は66.4%に達している。産業の構造からみると、第三次産業がすでに半分を占め、50.5%に達している。都市の構造からみると、2015年の常住人口の都市・町化率は56%に達する。

 第三、発展の原動力の転換。鉄鋼、コンクリート、板ガラスなどの産業は生産過剰の問題に直面し困難な状況にある。しかし新産業、新業態、新モデルは成長の速度が速く、特にインターネット経済の発展は目覚ましく、潜在力は十分大きい。

 全国政協委員であり、清華大学の中国及び世界経済研究センター主任の李稲葵氏は、中国経済新聞の取材に対し次のように述べた。「中国国民の貯蓄率は非常に高く、政府の調査によると貯蓄率は50%だが、我々の調べでは38%である。もし38%としても、アメリカの貯蓄率の2倍以上だ。そのため購買力には問題なく、市場の低迷もあり得ない。これほど多くの中国人が日本に行くことが説明の一例となるだろう。もし一連の改革が成功し、不動産や過剰生産の問題が落ち着き、あるいは新型都市・町対策が成功すれば、2016年下半期、遅くとも2017年の上半期には、中国の経済の成長減速は底打ちになるだろう」。

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