社外取締役がカバナンス欠如を指弾したクックパッドの『お家騒動』(前)
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2015年は、「カバナンス(企業統治)元年」と言われた。カバナンスとは意思決定や経営に規律をもたせることだ。それを監視し、点検するのが独立した社外取締役の役割だ。料理レシピサイト運営のクックパッドはカバナンスの最先端をいくと自負していたが、“お家騒動”の前にカバナンスは反古にされた。激怒した社外取締役が創業者を解任する騒動に発展した。
経営方針を巡り、創業者と社長が対立
経営方針を巡り、創業者と経営陣が対立していたクックパッド(株)は3月24日、東京目黒区の恵比寿ガーデンプレイス内で定時株主総会を開いた。創業者の佐野陽光(さの・あきみつ)氏(42)ら9人の取締役選任議案が可決された。佐野氏側が提案したメンバーが6人を占める。総会後の取締役会で穐田誉輝(あきた・よしてる)社長(46)が解任され、佐野氏に近い岩田林平(いわた・りんぺい)執行役(42)が新社長に就任した。
クックパッドの“お家騒動”は、創業者が経営権を奪還して、ひとまず決着がついた。だが、最先端のモデルを標榜していた委員会設置会社のカバナンス(企業統治)に汚点を残した。カバナンス無視の“お家騒動”に社外取締役たちの堪忍袋の緒が切れた。
佐野陽光氏と穐田誉輝氏は、ベンチャー起業家とエンジェル(創業間もないベンチャー企業に投資する個人投資家)の間柄である。創業者の佐野氏は発行済み株式の43.57%を持つ筆頭株主で、投資家の穐田氏は14.76%を保有する第2位の株主だ。12年4月、佐野氏は穐田氏を後任社長に指名して取締役執行役に退いた。自身は生活の拠点を米国に移し、料理レシピの世界展開に注力することになる。
穐田氏は、レシピ運営サイトの一本足打法ではリスクが高いとして、M&A(合併・買収)を重ねて事業の多角化を進めてきた。佐野氏は本業である料理レシピサイト運営への注力を求めていた。これが内紛の火種になる。創業者の反撃で妥協が成立
内紛が火を吹くのが、15年11月27日に行なわれたクックパッドの取締役会。佐野氏が新たな事業プランと自らが社長に復帰する案を提出した。これを受けて、取締役会は、社外取締役5名全員で構成される特別委員会を設置した。
特別委員会は12月18日、取締役会に勧告書を提出。勧告書に基づき、取締役会は佐野氏の社長復帰を棄却した。佐野氏は反撃に出る。16年1月8日、3月下旬開催予定の定時株主総会における株主提案を行使することを通知した。議案は「取締役8名選任の件」。自身を除く全取締役の交代を提案した。
プロクシーファイト(委任状争奪戦)に突入かと思われたが、両者が手打ち。2月5日、会社側の取締役選任案と、佐野氏の株主提案を一本化すると発表。2月12日、取締役選任案を公表した。穐田氏と佐野氏は共に残る。新たな案では取締役の人数を7人から9人に増やし、社外取締役3人を外す。佐野氏の意向を反映した選任案になった。社外取締役には、2月にコンサルタント会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーからクックパッドに入社した岩田林平氏が加わった。佐野氏が推す取締役が9人のうち6人を占める。巻き返した創業者の圧勝である。
だが、これにて一件落着とはいかなかった。
(つづく)
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