社外取締役がカバナンス欠如を指弾したクックパッドの『お家騒動』(後)
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社外取締役が創業者を糾弾
クックパッドは、いち早く委員会設置会社になったことが自慢だった。委員会設置会社とは、指名委員会、監査委員会、報酬委員会という3つの委員会を置く株式会社のことをいう。取締役の人事や報酬の決定権を社長ではなく、指名委員会や報酬委員会が握っている。
取締役会は、佐野氏の社長復帰の提案を棄却した。ところが、佐野氏は大株主をタテに、自分の主張を押し通した。委員会で決めるというルールを反古にした。これでは委員会設置会社とは何だったのかとなる。3月3日、クックパッドは「第12回定時株主総会招集通知」を開示した。監査報告書に、社外取締役で監査委員を務める岩倉正和氏(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)の「補足意見」が載った。岩倉氏は、明治の元勲・岩倉具視の子孫で、会社法の大家だ。
「佐野氏は、特別委員会の勧告書を受け入れることを取締役会で表明した。取締役の立場を離れて自らの株主としての立場を優先し、総株式の43.51%の議決権を奇貨として、株主提案及び委任状争奪戦を行なうことによって否定した」と批判した。
さらに、執行部については「委任状争奪戦で敗れることを恐れて、15年12月18日の取締役会決議に反する合意を佐野取締役と結んだ点において、問題なしとは言えない」と指摘。岩倉氏は、指名委員会の決定を無視して、大株主2人で取締役候補者を決めたのは、会社法違反に問われかねないと糾弾した。
社外取締役が佐野氏を執行役から解任
社外取締役と佐野氏の対立が沸点に達したのは3月22日。株主総会の2日前だ。クックパッドの取締役会は、佐野氏を海外事業を担う執行役から解任した。
「佐野氏は、株主提案を取り下げ、株主総会後の新体制を速やかに明らかにするようとの社外取締役からの強い要請を受けながら40日以上もそれを決めることがなかった。さらに、社外取締役から、新体制では帰国して代表執行役兼取締役として経営の前線にたつのか、と確認を求められても、まだ決めてないと答えた。これらを踏まえ議論した結果、執行役としてふさわしくないと判断され、佐野執行役を解任することにした」と発表した。議決権行使助言大手の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は佐野氏について「大株主でありながら、取締役会の承認を受けた事業計画の変更を迫ったのは適切ではない」と指摘。取締役再任案について、株主に反対を推奨した。
3月24日の株主総会を迎えた。初めて公開の場に現れた佐野氏に株主から質問が浴びせられたが、今後の経営方針についての説明を避けたという。それでも圧倒的数の株式を握っている創業者の佐野陽光氏ら9人の取締役選任案が可決した。賛成は佐野氏が85.41%、穐田氏が95.57%。総会後の取締役会で、穐田氏が社長を解任され、岩田林平氏が選任された。創業者の佐野氏は代表執行役に復帰した。
創業者の佐野氏は、自前の経営をやりたいのであれば、TOB(株式公開買い付け)を実施し、クックパッドを非公開化するのが筋だ。上場会社は創業者の個人的所有物ではない。(了)
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