有澤建設通算100周年 中興の祖・木下泰博物語(6)~木下泰博流経営の全面展開期に突入
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1997年9月、有澤建設(株)に三代目社長が誕生した。木下泰博氏55歳。23歳のときに入社して以来、前社長の有澤英一氏(現在は代表権のある会長に就任)とともに、二人三脚で同社を牽引してきた人物である。
この新社長へのインタビュー取材を、筆者が97年11月16日に行っている。以下、当時の記事を紹介しよう。
さらに強固に基盤を打ち固めて
有澤建設(株)といえば、地場建設業界でも創業80年という最古参のキャリアを持つ企業。長年の伝統に甘んじることなく、建設業とは何かというテーマとともに時代を先取りする企業を目指してきた。木下新社長は技術畑出身ということもあり、最新の技術での施工とお客様ニーズに合わせた環境作りという理念のもとに同社の躍進を支えてきた。
今回の社長就任についての感想をうかがうと、「長年、ナンバー2としていろんなことを学ばせていただきましたが、やはり社長業は違った側面がありますし、厳しい時代ですから大変です。今、私がなすべきことは、前社長が築いてこられた基盤を確実に継承していくことではないでしょうか」、とくに気負うふうでもなく、木下社長はさらりとそう答えられる。
業界の内外を問わず、さまざまな社長交替劇を見てきただけに、まずは足元をしっかりと固めていくことの大切さを痛感しておられるようだ。とはいえ、小さな改善にはさっそく取り組んでいる。
たとえば、7月の労働安全週間に合わせて行っていた安全大会がセレモニー化していることに常々疑問を抱いていた木下社長は、5月頃より協力業者を15社ずつに分け、本社での「安全技術研修会」というかたちに変更し、まずは協力業者の声を汲み上げる仕組みを作ることが安全管理の第一歩と考えた。この研修会ではそれぞれの立場から活発に意見が交換され、非常に有意義なものとなったという。また9月の全国安全労働習慣に行われた安全大会では事前の取り組みが功を奏し、労働基準監督署からお褒めの言葉をいただいたという。現状の体制に甘んじることなく各方面へきめ細かな対応をすることによって組織力の強化を図ってきた有澤建設(株)。同社の今後に対する期待も大きい。
21世紀へ躍進!新生・有澤建設
RC造ビルから注文住宅、分譲住宅、自社企画のマンションまで幅広く手がける同社は、単なる建築請負業ではなく、土地の仕込みから販売、元請けを主体とした受注体制をとってきた。だからこそ、バブル崩壊後の厳しい状況の中でも確実に利益を確保してこられたのである。しかもそれぞれの技術者たちが専門知識を生かして仕事に取り組むので、ユーザーからの評判はすこぶる良い。技術力の高さは、さらに携わる社員の質の高さを如実に物語る。そして、これこそ有澤前社長と木下社長が創り上げてきた結晶なのである。人作りをテーマにしてきた同社だからこそ、地域の信頼を一心に集め得るのだ。
「我が社では事業部別・部門別・階級別とそれぞれに会議を設け、組織力の強化に努めてきました。人材の育成については、1人ひとりの個性を活かし、適材適所という考えでやってきたと言えるのではないでしょうか。60人ほどの組織ですので、1人ひとりの動きを的確につかむことができるというメリットはありますね。大手ゼネコンが相次ぎ倒産する建設業界、これほど先の見えない状況は初めてと言っても過言ではありません。今、一番の課題は、ゼネコンの受注をどう活発化していくかでしょう。そのためには営業力のアップが不可欠です。『情断大敵』という言葉があるように、社員には情報を収集し受注につなげるように言っています」。
治に居て乱を忘れず――創業以来、培ってきた伝統に甘んじることなく、さらなる飛躍を目指して新生・有澤建設(株)が今、大きく動き出した。
発言から力みは感じられないが、心底で「大役を仰せつかった以上、有澤建設を尊敬される会社にして見せる」という闘志の燃え上がりが伝わってくる。
ここから、“木下泰博流経営”の全面展開の時期に突入したのである。(つづく)
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