【クローズアップ】フィジーで水道事業の改善に取り組む 国際貢献が社員にも好影響をもたらす
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(株)ネオス
不動産仲介業者、マンション管理会社向けに、不動産関連のシステム開発を手がける(株)ネオス。福岡市とJICAの支援を受けフィジーでの水道事業改善を進めている。同国では水道メーターの老朽化や検針作業の非効率性といった事情から収益につながらない無収水の問題が存在するが、水道検針アプリ「SNAPPY」の活用により、そうした課題の解決を図っている。同社にとっては社会貢献の想いを込めた初の海外挑戦であるが、社員の成長を促すという効果も見られるという。
新たなチャレンジとして海外へ
(株)ネオスは住宅不動産業向けのシステム開発やパッケージ販売、WEBコンテンツ制作、WEBサイトの企画制作と運営管理などを行っている。顧客は北海道から沖縄まで全国に広がるが、その同社が現在新たに事業化に取り組んでいる場所が、はるか南の太平洋の島嶼国・フィジーだ。水道検針アプリ「SNAPPY」を活用した水道事業改善を進めている。
同社にとっては初の海外展開となる。今後の国内市場の縮小を懸念してということもあるが、最も重要な目的はSDGsの観点からの社会貢献にあると同社取締役・福添広大氏、フィジー事業担当の河野誠喜氏は話す。
フィジーを選んだ理由について、同国の水道事業に課題があり、同社の技術を活用することで大きな貢献ができると確信したためという。また、福岡市とJICA(国際協力機構)が長年支援している国であり、両者がこれまで現地の政府や水道公社との間で培ってきたネットワークを活用することで円滑な展開が可能と判断した。
2023年度JICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業~ニーズ調査」に採択され、翌年にかけて現地調査を実施し、フィジーでは水道メーターの老朽化や検針作業の効率化が大きな課題であることを実際に確認した。現地の水道公社とも協議を重ね、同社のアプリ「SNAPPY」がこの課題を解決できるとの共通認識に至った。さらに、2024年度ビジネス化実証事業に採択され、今後、本格的な展開を進める。
現地の課題に合わせた解決策を提案
福添氏、河野氏によると、フィジーでは水道メーターの設置環境が悪く、検針作業を効率的に行えないのが現状という。たとえば、メーターが敷地奥に設置されているケースも多く、検針作業員がデータを取得しづらい環境などがある。その結果、適切な水道料金が請求されず、高い無収水率(収益につながらない水の割合、2018年時点で29%)の一因となっている。水道事業の収益性を向上させるうえで、このように無収水率の改善が課題となっている。
水道メーターの設置状況や
アプリの動作を確認するネオス担当者ネオスのアプリ「SNAPPY」は、スマートフォンを活用し、QRコードを読み取ることで検針データを即時に取得し、クラウド上で管理できるというものだ。検針作業のスピードを向上させ、ミスを削減するだけでなく、リアルタイムでのデータ管理が可能となるシステムの構築を進めることで、検針作業の効率化、そして無収水率の改善を実現する。
もちろん現地の実情に基づいたローカライズは欠かせない。日本では水道メーターにQRコードを貼ることで簡単に検針が可能だが、水道メーターが剝き出しに設置されていることが多いフィジーでは、シールが剥がれるケースが発生した。また、印刷が薄れて読み取れなくなるケースも確認された。そこでQRコードの代替として、シリアルナンバーを使う方法を検討している。同時に、システム自体の調整を行い、読み取り精度を向上させる工夫も施した。さらに、現地の作業員が扱いやすいようUI(ユーザーインターフェース)を設計し直し、短期間のトレーニングで運用できるよう最適化する予定だ。
先述した水道メーターの設置場所も大きな課題だ。なかには設置場所の問題でメーターが水没し、検針できないケースも見られた。こうした環境要因に対応するため、新たな手法で検針が可能なシステムの検討も行っている。
フィジーを拠点に海外に横展開を
海外、とくに開発途上国では、日本では想定できなかったような課題に直面することが往々にしてある。同社のフィジー事業では、相手方の対応スピードが遅いことに悩まされた。トップダウンの文化が強い国であり、水道公社の幹部との話し合いで進めようと試みるも、「フィジー・タイム」という言葉が生まれるほど緩やかな時間感覚をもった国柄であり、アポイントの連絡に1週間以上返答がないことも珍しくない。現地のビジネス習慣に合わせてスケジュールを長めに組むことを迫られたが、フォローアップを細やかに行うことで少しずつ対応できたという。
同社はビジネス化実証事業で成果を上げた後は、フィジーの水道公社との間で正式な導入契約を締結することを目指している。現地の水道公社の幹部とも積極的に協議を進めており、JICAや福岡市のネットワークを活用して、現地の技術者や作業員のトレーニングも並行して実施する予定だ。
若手社員の成長を促進
フィジー市場進出について、福添氏と河野氏は若手社員の成長機会にもなっていると評価する。エンジニアが現地に赴き、調査や提案を行うことで、視野が広がったという。彼らが現場で得た経験を社内で共有することで、モチベーションアップやスキルアップが期待される。また、同社の認知度の向上にも一役買った。
同社は今後、海外でのプロジェクトを含め、実践的な経験を積める環境を提供する予定だ。まずはフィジーでのプロジェクトを確実に成功させ、その実績を基に同様に水道事業に課題を抱えるほかの太平洋諸国や東南アジアへの展開も視野に入れている。
【茅野雅弘】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:稲田哲将
所在地:福岡市中央区大名1-4-1
設 立:1999年1月
資本金:1,000万円
売上高:(24/6)6億3,897万円法人名
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