世界遺産は本当に観光の目玉となるのか(前)
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世界文化遺産登録を前に特別展を開催
古代の祭祀跡が手つかずのまま残る玄界灘の孤島・沖ノ島には、古くから貴重な宝物が神宝として奉納されており、発掘調査で見つかった神宝約8万点が国宝に指定されている。「海の正倉院」と称されるこの島は、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として宗像大社や関連遺跡とともに、2017年のユネスコ世界文化遺産の登録候補となった。新たな世界遺産の誕生が待たれるなか、本年1月1日より九州国立博物館で特別展「宗像・沖ノ島と大和朝廷」が始まった。
歴史的、文化的な価値があることはもちろんだが、17年の世界遺産候補というタイミングも相まって、大きな集客が見込めるだろう。さらに、実際に世界遺産に登録ともなれば、観光客増加による地域活性や経済効果が期待される。事実、これまでにも世界遺産に登録されたスポットは観光客が急増し、地域経済へ波及効果があったという。
世界遺産登録のデメリット
では、世界遺産に登録されることはメリットばかりなのだろうか。
そもそも、世界遺産は観光や地域活性化などの経済的側面から推薦・登録されるものではない。「人類共通の遺産を後世に引き継ぐ」ことが本来の目的であり、世界遺産に指定されると国際条約上の「保全義務」が課される。また、世界遺産に登録されてもユネスコが保存のための費用を出してくれるわけではなく、むしろ地元自治体は保全のために、いままで以上の出費の必要があることは充分考えられる。
例えば、13年6月に世界文化遺産に登録された富士山では、年間30万人を超えるほどに増加した登山客により、斜面の崩落やゴミ問題などを引き起こしているとして、ユネスコの諮問機関から対策を行うよう指摘されている。18年12月までに、保全状況報告書をユネスコ世界遺産センターに提出しなければならない状態だ。内容が不十分だと判断された場合、最悪、登録が抹消される可能性もある。
(つづく)
【犬童 範亮】▼関連リンク
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