「ロシア・ゲート疑惑」を8割がた乗り切ったトランプ大統領(1)
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SNSI・副島国家戦略研究所 中田 安彦
鳴り物入りで上演が予告された舞台だが、肩透かしに終わったのか、それとも第1幕、第2幕が終幕しただけで、このあとに大波乱の第3幕があるのかーー。先週8日に行われた米上院情報委員会における、前FBI長官のジェイムズ・コミーの議会証言を評価するとしたら、そんな感じだ。保守にもリベラルにも両方に風刺がきついことで知られる「ニューヨーク・タイムズ」の女流コラムスニストのモーリン・ダウドは、この議会証言について、「マフィアのボスを追い詰めるGメンの対決」として描写していた。私はトランプ大統領をマフィアの大親分だと思っていたので、このたとえには「我が意を得たり」という思いがした。
私も、この議会証言を生で見ていたが、2時間半近くに及ぶ長丁場のうち、何度も緊迫する場面があった。ただ、「議会プロセス」として、司法妨害の疑いが「弾劾」につながるかという観点で言えば、可能性はかなり低くなったと評価できると思う。私は、8割方乗り切ったが2割の懸念要因が残っているという感触だ。
それについて詳しく述べる前に、「ロシア・ゲート」についておさらいしておきたい。この問題は、問題のレベルによっていくつかの階層に分けられる。大きくは3つである。
(1)【フリン問題】トランプがコミーの2人きりの部屋でフリン前補佐官に対する捜査中止を要請したことが「司法妨害」に当たるかどうか。それを議会と司法がどう判断するか。
(2)【ロシア関与問題】去年の大統領選挙において、ロシア政府によるアメリカの選挙プロセスに対する関与や妨害工作があったかどうか。
(3)【ロシア癒着問題】ロシアによってトランプ本人や側近を含む「選挙対策本部」が買収されており、トランプはロシアに不当な利益誘導を行う大統領として誕生した。
この3つのうち、議会証言が終わった段階では(1)については「議会の多数派である共和党は否定的、野党である民主党は肯定的」「司法判断はこれからだが、証拠が揃うのかどうか微妙」といったところであり、(2)については全会一致でロシアの選挙妨害の試みは、それは結果を左右するほどではないが存在したと決定づけられ、(3)についてはメディアはそれを示唆する記事を書いているが、コミー自身がFBIの捜査でも「大統領が捜査対象ではなかった」ということを議会証言で認めてしまっているので、現時点では、側近が買収されていたかどうかが焦点になる。「現時点では」というのは今後のムラー特別捜査官の捜査で万が一新証拠が出て来る可能性はゼロと否定できないからだ(可能性は低いと思うが)。その上で、ロシア・ゲート問題について振り返る。
(つづく)
(リンクは2017年6月14日現在のもの)
<プロフィール>
中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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