市民ホール&スケボーパークで変わるか?北天神“裏”エリア(後)

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ショッパーズにマツヤレディス

 さて、戦後のエリア内の動きのうち、市民会館を含めた須崎公園やボートレース福岡、さらには2つの鉄軌道について取り上げてきたが、その他の動きも見ておこう。

 まず、51年9月には日本銀行福岡支店が天神4丁目の現在地に移転。建物は格調高いルネッサンス建築を根幹とした設計だったが、老朽化等を踏まえて2017年10月から現地での建替えに着工し、22年3月に現在の建物となった。59年6月には福岡中央郵便局が天神4丁目の現在地に移転。その後、82年3月に現在の局舎に建て替わっている。

 71年6月には商業施設「福岡ショッパーズプラザ」が開業。また、かつて松屋百貨店があった場所では、松屋百貨店の流れを汲むファッションビル「マツヤレディス」が73年4月に開業。マツヤレディスはダイエーと業務提携を行って誕生した新たな商業施設として注目を集めたが、後に改装して2005年10月に都市型商業施設「ミーナ天神」となった。12年6月には、ミーナ天神に隣接するショッパーズの専門店棟であった建物が、「ノース天神」として新たに開業。一方で、15年9月に福岡ショッパーズプラザの営業権をイオン九州が承継したことで、「イオンショッパーズ福岡店」と改称した。さらにその後、ミーナ天神とノース天神との一体化による全面改修が実施され、23年4月に新たな「ミーナ天神」としてリニューアルオープンをはたした。

 このほか79年3月には、さまざまな用途に対応可能な貸ホール・貸会議室「都久志(つくし)会館」が開館した。同館は(一財)福岡県教職員互助会が管理・運営していたビルで、コンサートなどの各種イベントや会議等の場として広く活用されていたが、築40年以上が経過し、施設の維持・管理には大規模修繕工事が必要で費用負担が重いことから、20年11月3日をもって閉館。その跡地では現在、ソフトウェア開発・販売などを手がける応研(株)(福岡市中央区)が、新たなオフィスビル「(仮称)新応研ビル」の開発を進めている。RC造・地上11階建の同ビルは、応研の新たな本社ビルとなる予定で、設計監理を(有)G.U一級建築士事務所が、施工を佐藤工業(株)九州支店がそれぞれ担当。25年7月の竣工を予定している。

さまざまな機能を有し多くのオフィスが建ち並ぶ

那の津通り
那の津通り

 これまで紹介してきたように、現在の北天神“裏”エリアは市民ホールや県立美術館などの文化施設や須崎公園、ボートレース福岡という市内唯一の公営ギャンブル場、ミーナ天神などの商業施設、福岡中央郵便局や日本銀行福岡支店、福岡税務署、福岡県住宅供給公社などの公的な性格の強い施設など、さまざまな機能を内包。変わり種の施設としては、九州朝日放送(株)(KBC)が運営するミニシアター「KBCシネマ1・2」などもある。エリア内には、東西方向に那の津通り、県道602号、昭和通りの3つの幹線道路が通り、南北方向には渡辺北通り・天神那の津線が通っている。現在はエリア内に鉄軌道は通っていないが、ミーナ天神と地下部分で接続している天神地下街を通じて、福岡市地下鉄・天神駅が最寄り駅となる。また、幹線道路では西鉄バスの通常の路線バスだけでなく、那の津通りではBRT(連節バス)も走るなど、都心部・天神エリアの一角だけあって、交通利便性は相応に高い。

 エリア内の用途地域を見ると、天神4丁目は全域が商業地域(建ぺい率80%/容積率500%)、天神5丁目も全域が商業地域だが、大通り沿いが建ぺい率80%/容積率500%で、その他の部分は須崎公園を含めて建ぺい率80%/容積率400%。那の津1丁目はボートレース福岡部分が準工業地域(建ぺい率60%/容積率300%)で、そのほかの部分は商業地域だが、通り沿いが建ぺい率80%/容積率500%で、その他の部分は建ぺい率80%/容積率400%となっている。

 こうした用途地域に合わせて、それぞれに適合した施設配置がなされているが、とくに天神4丁目ではミーナ天神のような商業施設だけでなく、多くのオフィスビルが建ち並んでオフィス街を形成。代表的なものを挙げると、「博多天神ビル」(83年9月竣工)や「天神第一ビル」(84年4月竣工)、「天神幸ビル」(84年11月竣工)、「天神ビル新館」(89年3月竣工)、「JRE天神クリスタルビル」(93年8月竣工)、「メットライフ天神リバーフロントビル」(99年3月竣工)、「第7明星ビル」(01年3月竣工)、「久原本家天神ビル」(01年3月竣工)、「天神ノースフロントビル」(10年1月竣工)、「第3明星ビル」(13年9月竣工)、「第1明星ビル」(19年2月竣工)、「AUSPICE福岡天神」(24年7月竣工)など(上記はいずれも現在のビル名称)。これらのオフィスビルにはさまざまな企業が入居して事業活動を行う一方、そうした企業人らからの需要を見込んで、居酒屋などの飲食店も多く軒を連ねている。

 一方で、エリア特性的にこれまでそれほど住戸の供給は進んできておらず、住民の数も限られている。福岡市の住民基本台帳に基づく公称町別の人口および世帯数は25年2月末現在で、天神4丁目は人口213人/158世帯、天神5丁目は人口671人/505世帯、那の津1丁目は人口85人/64世帯となっている。20年前の05年2月末現在(天神4丁目:人口164人/113世帯、天神5丁目:人口562人/353世帯、那の津1丁目:人口80人/53世帯)と比べても、市内の他エリアほど人口の増加は進んでいないようだ。

 だが、それでも天神に近い立地と、交通利便性の高さもあって、少ないながらも一定数のマンション・住戸の供給はなされている。エリア的に多いのは賃貸マンションで、近年では「ヒット天神BLD」(63戸、14年1月竣工)や「デルソーレ天神」(41戸、14年1月竣工)、「Modern Palazzo 天神AXIA」(42戸、19年2月竣工)など。

 なかでも、最近とくに注目を集めたのは、本誌vol.49(22年6月末発刊)でも紹介した、MIRARTHホールディングス(株)(東京都千代田区)と(株)タカラレーベン(東京都千代田区)による分譲マンション「レーベン福岡天神 ONE TOWER」(153戸、24年2月竣工)だろう。同マンションは、タカラレーベンの創業50周年記念物件かつ福岡市内初供給物件として開発されたRC造・23階建のタワーマンションで、天神の新たなランドマークとなることを目指したもの。須崎公園の西側に近接し、市民ホールを見下ろすかたちで屹立する。

閉鎖的な競艇場を地域に開かれた施設に

 さて、今回取り上げている北天神“裏”エリアは、前述したようにさまざまな機能・施設を有し、エリア特性に合わせた種々の活用がなされているものの、冒頭に述べたように、天神のメインエリアと比べると、どうしてもどこか陰気で暗い雰囲気が漂う、どちらかというと裏通り的なイメージが強く感じられる。

 この原因について、考えられる要素をいくつか挙げてみると、①「天神からの人流のほとんどは、ミーナ天神・ショッパーズあたりまでで止まってしまっていること」、②「木々がうっそうと生い茂った再整備前の須崎公園の存在」、③「お堅いイメージかつ暗い色合いの外観の県立美術館の存在」、④「オフィス街の裏通り的な雰囲気」、そして⑤「公営ギャンブル場であるボートレース福岡の存在」──このあたりではないだろうか。

 このうち②と③については、たしかに以前の須崎公園は、開園から半世紀以上が経過し、噴水や屋外音楽堂などの公園施設全体、そして公園内の県立美術館や隣接する市民会館などでも老朽化が進行。また、育ち過ぎた園内の樹木などが、ややうっそうとした雰囲気を醸し出し、エリア全体のイメージ低下に拍車をかけていたことで、市民の足も遠ざかっていた感はあった。だが、この点については、市民ホールの開業と須崎公園の再整備などによって、ある程度は陰鬱なイメージが払拭されることが期待されている。ただし、県立美術館も大濠公園の隣接地への移転が決定はしているものの、移転後も現在の建物を補完的に活用する方針を示しているため、しばらくはお堅い建物としてこの地に残りそうだ。

 一方で、⑤についてはやはり根深いものがある。公営とはいえ歴としたギャンブル場であるため、たとえば舟券を握りしめたオッチャンたちが人目をはばかりながら足しげく通って賭けごとに熱狂し、そしてあえなく散財した彼らの絶望と怨嗟の念がこびり付いたような、そんな陰鬱でアンダーグラウンドな雰囲気のイメージの払拭は、なかなか一筋縄ではいきそうにない。これまでもボートレース福岡では、03年に現在の中央スタンドを、05年に芝生広場を設けるほか、20年8月には東スタンドで全面改修を施したリニューアルを行うなど、近年は「安心して遊べる存在感あるエンターテインメント施設」を目指して、明るく開放的な空間づくりに努めているが、まだまだ市民が気軽に足を運べる場所にはなり得ていない印象だ。

 そうしたなか現在、福岡市では「ボートレース福岡パーク化事業」を進めている。同事業は、開設70周年を迎えたボートレース福岡において、今後も地域や市民の方々に楽しんでもらえる施設であるために、地域に開かれた魅力的な施設を目指し、ボートレース場の施設を有効活用するとともに、多くの市民の方々に楽しんでもらえる場の提供と新規顧客の獲得を図っていくために、ボートレースパーク化を推進するもの。かつて博多臨港線が走っていたボートレース福岡の駐車場の一部など約9,100m2を、複合アミューズメントパークとして活用していく方針で、事業者公募の結果、24年12月に大和リース(株)福岡支社を代表とし、(株)ムラサキスポーツ、パシフィックコンサルタンツ(株)九州支社で構成されるグループが優先交渉権者となった。

 同グループによる提案では、初心者や上級者など、利用者の技術レベルに応じた2つのスケートボードパークを整備するほか、飲食店やスポーツ関連店舗などが入居予定のにぎわい施設の整備が提案されている。核となるスケートボードパークの監修は、オリンピックの監督を経験し、国内において多くのスケートボードパークの監修を手がけてきた西川隆氏が担当。同氏の考える「世界でも戦える選手を育成できるパークをつくる」ことを目指し、国内外でもここにしかない特徴的な国際規格スケートボードパークとしていく計画で、初心者からプロスケートボーダーまで、誰もが日常的にスケートボードに触れることができる、屋内型としては国内最大級のスケートボードパーク(約3,000m2)となる。また、那の津通りを挟んだ向かい側でリニューアル整備が進む須崎公園とのみどりの連続性を意識した、イベント広場も整備される予定。2つのスケートボードパークを含めた複合アミューズメントパーク全体の供用開始は、26年10月を予定している。

 ボートレース福岡の入り口側に、こうした地域に開かれた新たなアミューズメント施設を整備することによって、ギャンブル場という閉鎖的なイメージが払拭されることが期待されている。

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 今回取り上げた北天神“裏”エリアは、福岡市の都心部・天神のメインエリアと、MICE施設などが集積するウォーターフロントエリアとのちょうど中間に位置し、両エリアをつなぐ結節点となるエリアである。また、天神ビッグバンのエリア内に入っている部分も多く、これから「福岡中央郵便局およびイオンショッパーズ福岡の段階連鎖建替えプロジェクト」として、福岡中央郵便局(竣工目標:2030年頃)とイオンショッパーズ福岡(竣工目標:30年代中頃)がそれぞれ段階連鎖的に建替えられていく計画となっている。この建替えにより、天神中心部や須崎公園などの周辺地域、さらにはウォーターフロントにつながる、都心部回遊拠点の形成を目指していくとしているが、ここに福岡市民ホールおよび再整備された須崎公園、そして複合アミューズメントパークを備えるボートレース福岡なども加わることで、それぞれが相乗効果を発揮しながら“裏”のイメージを払拭し、国内外から多くの人々が行き交い集う、都市・福岡に新たな魅力を付加するエリアとなっていくことを期待したい。

(了)

【坂田憲治】

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