築地市場移転、小池都知事の「アウフヘーベン」の害悪(1)
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今年10月11日に予定されている築地市場(東京都中央卸売市場)の豊洲への移転は、東京都民の疑問と不安を残したまま、強行されようとしている。新市場における土壌汚染や建物の耐震性への不安は決して払拭されていない。小池百合子都知事は、各種専門家や市場関係者らの指摘や質問に耳を塞ぎ、実損を与えた業者にも頭を下げず、安全宣言も出さないまま。今回、データ・マックスは、豊洲市場水産仲卸売場棟の構造設計に警鐘を鳴らす(協) 建築構造調査機構の仲盛昭二代表とともに現地を視察。市場関係者を取材した。
臭いものにはフタの「アウフヘーベン」
1935(昭和10)年2月の開場以来、食の台所として東京の経済成長を支えてきた築地市場。東京都によると、1日あたり、水産物1,676t(16億1,100万円)、青果物1,095t(3億2,300万円)を取り扱い、約4万2,000人、約1万9,000台の車両が入場する。今では、国内外の観光客が大挙して押し寄せる一大観光地でもあり、食文化の情報発信に貢献する「日本の食の聖地」といっても過言ではないだろう。
都営大江戸線「築地市場駅」の構内にも漂う水産市場独特の新鮮な魚介類の匂い。築地市場は、その姿を見せないうちから敷地面積23万836m2、建物面積28万5,476m2という日本最大級の大きさを体感させる。一方で、築地の土地は別の意味でも価値が高い。市場とともに視界に入る建設中の高層建築物が、その土地が再開発の超一等地であることを物語る。
2016年8月末、東京都初の女性知事となった小池百合子氏が、同年11月に予定されていた豊洲市場の開場を延期し、築地市場の解体工事も延期すると発表した。
「アウフヘーベン」(小池都知事)。ドイツ語で一般に「持ち上げる」という意味だが、「矛盾を発展的に統合する」という哲学的な意味もある。カイロ大卒で語学に堪能な小池氏は、よく“カタカナ”を使う。
「築地か、豊洲か」の2択ではなく、どちらも生きる方策を考えるという意味だったのだろう。移転延期は、都民の支持を受け、小池氏と同氏が率いる都民ファーストの会の躍進の一因にもなった。小池都知事は、有識者からなる市場問題プロジェクトチーム(PT)を結成し、豊洲市場の土壌汚染対策などについて検討を開始。そして、“パンドラの箱”を開けた。
かつて東京ガス(株)のガス貯蔵施設があり、土壌汚染が懸念されていた豊洲市場の土地で、土壌汚染対策である「盛り土」をしていなかったという問題が発覚した。指摘したのは小池都知事本人だ。さらに豊洲市場の構造設計の問題も浮上した。
発展的解決策を模索するための市場問題PTであったが、問題噴出でやればやるほど、移転への疑問が強まる展開。結局のところ、「東京都のお墨付きで大手企業がやっているのだから信じなさい!」という結論で臭いものにフタをした。
政治家、役人、大企業の不祥事が続出している昨今、非常に説得力がない言葉である。人生をかけて「危険地帯」といわれた豊洲へ移転する江戸っ子たちは、時の将軍様である小池都知事に、政治家生命をかけた『安全宣言』を求めたいところだが、残念ながら、小池都知事は都職員を矢面に立たせてばかり。逃げ腰のその眼には、すでに最悪のケースが見えているのかもしれない。
(つづく)
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