2024年11月26日( 火 )

疲弊する自治組織の活性化につながるか(後)

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自治会及び各種団体の会計勉強会を実施~事業内容も監査する


 市内の自治組織会及び各団体は毎年4月までに定期総会を開き、前年度の事業報告及び決算内容、当該年度の事業計画や予算案の承認を受ける。また総会に先立ち予算使用に不正はないかなど会計監査を実施している。

20160411_001 松島校区は2014年度から前自治協議会会長で松島会館館長の芝田良倫氏の提案で、各自治会長・会計及び各種団体の会長・会計を対象に会計勉強会を実施している。自ら講師を務める芝田氏は「補助金は市民の税金。1円たりとも無駄にしてはいけない」と力強く指導する。

 15年度からは会計監査だけではなく事業についても監査を実施している。その事業目的や参加人数などを検証、費用対効果も検討したうえで次年度の予算配分が行われる。高橋会長は「事業監査をしている自治協議会は福岡市内でも多くはない、誰もが健康で安心して暮らすことができる地域社会の実現に向けてこれかもしっかりと事業監査を継続する」と力強い。

地域の特性に応じた課題に向き合う

 松島校区自治協議会は今年で創立23年目を迎える福岡市内でも比較的新しい校区である。急速にマンションが立ち並び、人口も18,000人余に急増した。面積も広く国道3号線バイパスにより校区の3分の1が東西に分断されている。そのためコミュニティの核である公民館へは最も遠いところからだと徒歩で30分近くもかかる。小学校や公民館周辺に向かう公共交通機関はないためイベントや集会など高齢者の足では非常に困難を伴う。また小学校もやや西側にあり交通量の多い国道バイパスを横断するなど課題も存在する。

 校区は多々良川と宇美川の合流地点であり度々水害にも悩まされてきた。そのため自治協議会防災委員会は行政に先駆けて防災マップを独自に作製。市の防災マップの先駆者となった。また、毎年小学校で開催する松島校区夏祭りには3,000人を超える住民が参加。イベントを実行していく過程で校区内の人材発掘や後継者の育成に取り組んでいる。

自治会加入の促進と女性活躍推進が課題

 一昨年完成したマンションの1つが自治会を立ち上げた。自治協議会・自治連合会・公民館が一体となって連合会への加入を呼びかけた結果、新年度から松島校区自治連合会に加入する。しかし、単位自治会をつくり加入と参加を呼びかけるのは容易ではない。自治会のないマンションも数多くある。所沢市が「自治会加入を促進する条例」を定めたことをから、他の自治体にも条例制定の動きが広がってきている。
 これからのまちづくりは補助金の拡大も必要だが、それ以上に「地域住民、自治会、公民館、住宅関連会社、福岡市」の相互理解と協働が求められ、住宅関連会社には自治会活動の活性化の推進を努力義務とする行政の強力な指導が必要である。集合住宅の建築・販売・管理をする事業者は集合住宅の入居者に対し自治会への加入促進または自治会の設立を促進する条例の制定も検討する時期に来ている。

 もう一つの課題は女性の活躍の推進である。防災・防犯、高齢者の見守りや子育て支援など地域課題の解決には女性の視点からみた地域コミュニティが重要である。校区の「男女共同参画推進協議会」や「自治会」の運営に女性の視点を積極的に取り入れることで、自主防災組織づくりや、高齢者の見守り、地域における子育て支援など、課題解決の新しい活動が可能となる。福岡県の自治会長に占める女性の割合は8.1%(2014年4月1日現在)と1割に満たない。役員も含め、地域では圧倒的に男性の割合が高く女性の活躍はまだまだ十分とは言えない状況である。

 今年度、福岡市は新たな「共創」のステージに向け自治協議会に対する補助金を「自治協議会共創補助金」として5億2,172万円に拡充。事業費・活動費を増額し絆づくりや新たな担い手づくりを推進するとしている。もちろん事業費や活動費の支援は必要だが、地域により必要とする課題が違っており、それに対応して実態に即した支援が必要となる。そのために地域の中できめ細かに活動できる「有償ボランティア」の採用も本格的に検討する必要があるのではないか。

【吉武 輝実】

 
(前)

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