地震被害軽減に威力を発揮する免震構造
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福岡大学 工学部 建築学科 教授 高山 峯夫 氏
今回の熊本地震では、東日本大震災とは違い津波による被害こそなかったものの、多くの建物などが倒壊するほか、熊本城や阿蘇神社などの古い建築物なども深刻な被害を受け、地震のすさまじさを物語っていた。今回、地震災害から建物を安全に保つための免震構造に関する研究を行っている、福岡大学工学部建築学科教授の高山峯夫氏に話を聞いた。
――今回の地震では、熊本城や阿蘇神社などの古い建物なども大きな被害を受けました。こうした昔からの木造建築物は地震に強いようなイメージがあったのですが、建物の免震構造についての専門家である高山教授から見られて、いかがですか。
高山 古い建造物にもいろいろありますよね。たとえば奈良にある法隆寺の五重塔などは、千年近く経っていても倒壊した記録がないなど、昔の建築物は地震に強いと言われています。ただ、五重塔がどうして地震に強いのかというメカニズムについては、実はあまりよくわかっていません。五重塔は5層の櫓が重なっていますが、あれは釘などで固定されておらず、ある意味、各層が今で言う柔構造になっています。そのため、その柔構造で地震の揺れを軽減しているのではないかとか、すごく大きな木材が使われているので、木材同士が軋んだりすることによって地震のエネルギーを吸収しているのではないかとか、いくつかの考えはあるわけです。ただし、これが正解だというのは、まだわかっていません。ですが、そういったいろいろなことが作用して、地震に強いというか、地震の力を逃がすような構造ができあがっているように思います。
阿蘇神社については、構造について詳しく知らないのであまりコメントできないのですが、おそらく同じようなメカニズムというか、それなりに地震のエネルギーを吸収するような機構はあったと思います。ですが、それよりも今回は、やはり地震が強すぎたというように考えざるを得ないのではないかと思います。また、前震・本震と2度も大きな揺れを受けていますので、それも大きいのではないでしょうか。
――現代的な建物では、今回の地震で亀裂が入ったと言われたマンションが、実はエキスパンションジョイントで、うまく地震の衝撃を逃したと話題になっています。そのほかに、今回の地震で免震などの効果を発揮した事例があれば聞かせてください。
高山 熊本大学の大学病院は免震構造になっていますので、何も地震の影響はなく、きちんと病院の機能を果たしているということは聞いています。一方の熊本市民病院などは、病院棟が傾くなどして機能が停止状態です。まだすべてを調査し終わってはいませんが、免震構造の建物は、おそらく機能を発揮したのではないかと思います。
一概に耐震がすべてダメというわけではありませんが、耐震構造だと、建物が無事でも内部がめちゃくちゃになっているわけで、そういった意味では免震構造のほうが、きちんとした性能を発揮できたのではないかと思います。――今後、熊本の被災地のほうで復興を進めていく際は、免震構造の建物で再建していくほうが望ましいのでしょうか。
高山 そもそも免震構造ができ始めたのが30年くらい前からで、増えてきたのは阪神・淡路大震災以降のことです。免震構造の建物は今、日本全体で3,000棟以上建っていますが、まだまだ数が少なく、ほとんどが耐震構造です。今後、被災地で復興を進めていく際、とくに病院や役所など、防災拠点となり得る場所を再建する場合には、免震構造というのが一番の選択肢になるのではないかと思います。
【文・構成:坂田 憲治】
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