オバマ米大統領が被爆地訪問へ~高まる「核なき世界」への期待
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オバマ米大統領が広島を訪問する見通しとの報道を受け、同じ被爆地である長崎でも期待が高まっている。田上富久・長崎市長は4月23日、公式HPに歓迎のコメントを発表。核保有国の元首が被爆地を訪れることは、核廃絶に向けて大きなアピールになるとした。一方、米国では原爆投下を肯定的に捉える考え方が一般的であり、「謝罪」と受け取られるのではないかと警戒する声も多い。しかし、今回は米有力紙も広島訪問を指示する社説を出しており、被爆地の念願に追い風が吹いている。
米国は長年、広島や長崎と一歩距離を置く姿勢を続けてきた。しかし、最近になってその姿勢は軟化しており、2010年にジョン・ルース氏が在日米大使として初めて広島平和記念式典に出席し、長崎の原爆落下中心地に献花した。後任のキャロライン・ケネディ大使も就任以来、毎年広島、長崎の式典に参列している。このため09年に「核なき世界」演説でノーベル平和賞を受賞したオバマ米大統領が在任中に広島、長崎を訪れるのではないかという期待は大きかった。
核保有5大国(米露英仏中)の元首で、唯一被爆地を訪問したのは旧ソ連のゴルバチョフ大統領。1991年に長崎を訪れ、移動中に車を降りて平和公園まで歩き、沿道の市民を驚かせている。4月10日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の最初の事前会合となる主要7カ国(G7)相会合が広島市で始まったことに合わせ、ケリー米国務長官らは11日に平和記念公園を訪問。原爆資料館を見学し、原爆慰霊碑に献花した。核保有5大国の現職外相の被爆地訪問は1945年の原爆投下後初めてであり、これを契機にオバマ大統領の被爆地訪問が現実味を帯びて語られるようになった。
米国で広島、長崎への原爆投下について「戦争を早く終わらせ、兵士たちの命を救った」と肯定的に見る向きが強い。このため大統領の被爆地訪問は「謝罪」に繋がり、戦後における米国の世界戦略を自ら否定することにもなりかねず、実現することはないとされてきた。しかしここにきて、世界的に核廃絶の機運が高まるなか、オバマ大統領がノーベル平和賞受賞したことで流れは一変。北朝鮮の核実験、ISなどテロ組織の核兵器所有疑惑を抑え込む世界世論の形成に、大きく貢献することが期待されている。
近年になり、被爆者の高齢化が加速し、平均年齢も80歳を超えた。平和活動や被爆者支援の先頭に立ってきた被爆者らも次々と亡くなっており、高齢化による世代交代も進んでいる。被爆者にとって、米大統領の被爆地訪問を目にする最後の機会になるかもしれない。これは皮肉でもなく、被爆80年を迎える被爆者はほとんどいないだろうと地元では囁かれている。
田上市長は公式HPでこう述べている。
「現職の米国大統領が被爆地を訪れ、被爆の実相に直接に触れることの意義は非常に大きいと考えます。
また「核兵器のない世界」への揺るぎない決意を被爆地から世界に向けて発信していただければ、核兵器廃絶の機運を高める大きな一歩になると思います。
被爆地長崎としても、大統領の広島訪問が実現することを強く期待します。」謝罪を求めるのではなく、ともに核廃絶の決意を被爆地から発信する。それが広島、長崎の願いだ。
【平古場 豪】
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