高いブランド人気と人口減少のジレンマ、地方創生に向けた糸島市の取り組み(後)
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糸島市長 月形祐二氏
福岡市との共存維持を図っていく
――人口を増やすということでは定住だけでなく、交流もあります。
月形 糸島市には年間580万人の観光客が訪れています。従来は夏だけというイメージでしたが、最近になって冬場のカキが人気を集めるようになりました。カキ小屋には、シーズンだけで約30万人が来ています。
観光客のほとんどは日帰り圏内からですが、今後はこれをもっと広げ、宿泊型の観光を増やすのが今後の課題です。
糸島市は一般的な観光地と違い、目玉となるような観光スポットはほとんどありません。どちらかといえば、工房やレストランなどを巡るような観光客が多いですね。糸島の豊かな自然に魅かれ、芸術家が工房を開いたり、おしゃれなカフェが次々にオープンしています。こういったところでのんびりしようというわけです。こうした市内のスポットを特集する情報誌が出版されたことで、このような形の観光に火が付いたのですが、これは市ではなく市民の努力の賜物です。おもてなしの心が高く評価されたということであり、糸島観光の可能性がさらに広がりました。
――定住人口を増やす取り組みは。
月形 現在、市では前原東土地区画整理事業を進めています。20ヘクタールの土地を開発し、約3,000人が居住できるスペースを確保しようとするもので、2016年3月末までに56世帯が居住しました。この地区にはJRの新たな駅も作られる予定です。福岡市西区に九大学研都市駅が出来たことで周辺の人口は増えましたが、これにともない地価も上昇しました。前原東地区にはその負担を嫌う若い世代を取り込んでいきたいと考えています。本市は、JRや高速バス等を利用して、福岡市中心部まで30分から40分で行ける位置にあり、ベッドタウンとしても大きな魅力があります。
――そのためには住みやすい地域であると認識してもらうことが重要ですね。
月形 まずは前原東土地区画整理事業をいい形で進めたい。さらに子育て世代を多く呼び込むために、子育て支援などを充実させていきます。
一方、人口が減ったことに伴い、とくに周辺地域で空き家が増えているという問題があります。現在は800軒の空き家があり、防犯などさまざまな理由から対策を図っていかなければなりません。市としては、これらの空き家を田舎暮らしに憧れている人の受け入れ先として活用しようと取り組んでいます。まず、市役所に定住支援嘱託員を置きました。ここでは移住を希望する人に空き家の情報を提供し、各地区の地域コーディネーターにつなぎます。彼らは地元の空き家について豊富な情報を持っており、移住希望者の要望に合わせた物件を紹介するという取り組みで、2016年度は3つのモデル地区を設定しました。この成果を基に、さらなる展開に進めていきたいと考えています。
ただ、住みたいと思ってもらっても、実際に住むとなれば決断しなければなりません。その前段階として、まずは糸島市を知ってもらうことが大切。数ある居住地の競争に勝ち抜くためには、糸島市を選んでもらわなければなりませんから、そのためも市は知恵を絞っています。
糸島市の発展は、やはり福岡市との関係を抜きに考えることはできません。福岡市の人口が増え、その人たちが休日になると糸島市を訪れるという流れは確実に生まれています。
今年11月13日には、福岡市と共同で開催する「福岡マラソン」を予定しています。福岡市の都心部から自然豊かな糸島を約1万人が駆け抜けるこの大会は、「全国ランニング大会100撰」に選ばれるほどの高い評価を得ています。
このように、福岡市と一緒に発展できるようないい関係を築くことは、糸島市における地方創生のカギの一つだと考えています。
(了)
【文・構成:平古場 豪】関連記事
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