【生涯現役】技術力と営業経験が生きた英訳で中小企業を応援
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中野 宣邦 氏
高齢化にともなう医療や介護、社会福祉の問題が度々クローズアップされるなか、定年後もこれまでに培った経験と知識で、社会に貢献したいと労働意欲を見せる人も決して少なくはない。今回、紹介する中野宣邦氏(74)もその一人。パンフレットや契約書の翻訳で、中小企業の海外進出をバックアップしている。
中野氏は、東京大学電子工学科を卒業し、1965年、八幡製鐵(現、新日鐵)に入社。マサチューセッツ工科大学大学院卒業後、溶鉱炉や製鉄プロセスの制御システムの開発、さらに営業までを任されるようになり、契約書原案(英語)まで1人で担当した。その後、米国のベンチャー企業からヘッドハントされ、シリコンバレーで勤務した。
帰国後、科学技術関連の調査会社の代表となり、福岡県の科学技術コンサルなども務めていた中野氏だが、脳梗塞という危機に襲われる。「歩きは不自由になりましたが、幸い、頭のほうは無事でした」(中野氏)。病を克服した後も技術力と英語能力を生かし、米国からの依頼を受けて特許調査などを行ってきた。
自分の持つ知識・経験で社会に貢献したいという中野氏は、一線を退いた現在も、さまざまな仕事を引き受けている。直近では、6月3日から5日までの3日間、福岡国際会議場で開かれる国際会議WWAS(Working Women in an aging Society:高齢化社会における働く女性)で、同会議実行委員長の英文開会挨拶の和訳、11の後援団体の英文による概要説明などをボランティア業務として行った。
中野氏の経験が最も生きるのはビジネス関連の翻訳である。多くの中小企業が海外進出でぶつかるのが言葉の壁。契約書やマニュアルにおいて、微妙にニュアンスが異なる専門用語を間違え、トラブルに発展するケースもある。完璧な翻訳を行うには技術の理解が必要。そこで科学技術に精通した翻訳者の出番となる。中野氏は、科学技術の研究開発者でありながら、自ら営業し契約を結んできた経験を持つ。単なる技術者ではなく、ビジネスのこともわかっているという貴重な人材なのだ。
国際化が進んでいる今、国内の展示会に、海外のビジネスマンが訪れることは珍しくなくなった。日本語しかないパンフレットやプレゼンだけでは、大きな商機を逸することになるだろう。「自分の能力と経験を生かし、海外ビジネスのお手伝いをしたい」と意欲を見せる中野氏。福岡の中小企業にとって心強い味方が現れた。
【山下 康太】
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