沖縄県議選、翁長県政与党が過半数~持ちこたえた自民党
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6月5日投開票された沖縄県議選(定数48)で、辺野古新基地建設に反対する翁長雄志知事を支える与党勢力が議席を増やし安定過半数を獲得した。1年半前の県知事選、2014年の衆院選に続いて、辺野古新基地反対の民意があらためて示された。選挙結果は、辺野古新基地建設を「あらゆる手段で阻止する」とする翁長県政の信任でもあった。
辺野古移設反対の民意
政府は、翁長知事の埋め立て承認取り消しと、それに続く訴訟の和解によって、辺野古沖での工事の中止に追い込まれた。市民運動と県知事という行政権限が「二人三脚」で、新基地建設を阻んできたと言える。
県民は海上・陸上で新基地建設阻止のために行動を続けてきた。沖縄県民の「体を張ってでも阻止する」との決意は強固だ。その覚悟は、沖縄戦直後に住民を収容所に囲い込んでの土地取り上げや、銃剣とブルドーザーによる強制接収の基地形成史に由来する。
しかし、その固い決意も、政府は、海上保安庁をはじめ国家権力を動員して実力で排除してきた。仲井真弘多・前知事が辺野古埋め立てを承認したように、県知事さえ籠絡してしまえば、政府にとって市民運動を蹴散らすのは容易ではないにしても、不可能ではない。政府は、中央政府に付く県知事なのか、市民運動に付く県知事なのかが、米軍基地体制の維持にとって決定的な違いを生むことを百も承知している。
県民が翁長県政を信任した意味の重さを一番よく知っているのは、政府関係者だろう。県議選の結果は、県政与党が共産党6議席、社民党6議席、沖縄社会大衆党3議席、無所属など12議席の合計27議席。野党が、自民党14議席、無所属1議席の合計15議席。中立派が、公明党4議席、おおさか維新の会2議席の合計6議席となった。
告示直前に起きた米軍属による女性遺体遺棄事件は、人間の尊厳と人権を踏みにじる米軍基地の現実を浮かび上がらせた。繰り返される犠牲を前に、命を守れなかった無念さを沖縄県民は共有している。日本復帰後の43年間で、殺人や強姦などの凶悪犯罪は574件におよぶ。基地との共存は受忍限度を超えている。女性遺体遺棄事件後も米軍属覚醒剤密輸事件や飲酒米兵国道逆走事件が起き、「綱紀粛正」や「再発防止」の言葉に実効性がないことを示した。「もはや我慢ができない」との県民世論は、県議選の結果にも反映した。
逆風下で自民党も議席増
女性遺体遺棄事件後、沖縄県議会が初めて米海兵隊の撤退を要求して決議し、米四軍調整官が異例の記者会見を開いたり、在日米海軍が基地内外の全面禁酒令を出すなど、異例ずくめなのも、臨界点に達した県民の怒りがあるからだ。
自民党は、逆風にさらされた選挙戦だった。与野党逆転をめざし多数を公認推薦した結果、落選が目立ったが、よく見ると、13議席から14議席に議席増。開票当日は、地元テレビ局の開票速報で早々と当確を決める候補者が続出し、上位当選が相次いだ。猛烈な逆風にもちこたえた「もう1人の勝者」と言ってもいい。
「基地イコール悪」は沖縄県民の共通認識だ。しかし、同じ共通認識を持ちながら、「基地撤去」という主張と、「基地は安全保障上必要」「米海兵隊は日本を守るために不可欠」「必要悪だ」という主張は、衝突し、かみ合わず、結論の出ないすれ違いの議論が続いてきた。反基地感情がどれほど根強く広範でも、それが「基地撤去」とイコールではないのが、基地問題の抱える難しさだ。
県議選は、参院選の前哨戦にもなった。参院選沖縄選挙区(改選数1)は、自民党現職で沖縄担当相の島尻安伊子氏(51)と、辺野古新基地反対の「オール沖縄」が推す新人の元宜野湾市長の伊波洋一氏(64)との事実上の一騎打ちが予想される。2014年の衆院選では、「オール沖縄」は4つの小選挙区で全勝し、自民党は小選挙区の議席を失った(比例で復活当選)。2018年県知事選という県内政局の頂上決戦を視野に、再び、「オール沖縄」VS「中央政府・自民党」が激突する。【山本 弘之】
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