パナマ文書の衝撃とその余波(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「パナマ文書」は、パナマにある「モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)」という法律事務所で作成されたものである。
この法律事務所は、ある企業がタックスヘイブンに法人を設立しようとすると、支援をしてくれたり、節税のためのスキームなどをアドバイスする法律事務所である。この分野では、世界4位の規模を誇る法律事務所で、世界40カ国に支店を有し、取引している主要な金融機関は、ドイツ銀行、クレディ・スイス、HSBC、UBSなど、そうそうたるものである。今まで、このような法律事務所では、法人設立のサービスを提供する際に代理人を立てたり、いろいろな方法で、法人の真の所有者は誰なのかがわからないようにしてきた。そのような匿名性を利用して、企業も個人もタックスヘイブンで資産を隠したり、課税を逃れたりしてきた。
ところが、今回のパナマ文書の流出は、これまでは究明ができなかった法人の本当の所有者は誰なのかを明らかにするかもしれない。パナマ文書は、金融の闇の一部を暴くことになりかねないし、個別取引の実態が明らかになることで、今まではグレーであった取引を黒に変える可能性すらある。とくに、北朝鮮などの独裁者の資金、テロ資金などの移動を明かす機会になるかもしれない。
法律事務所「モサック・フォンセカ」の主張によると、ハッカーの攻撃によってパナマ文書が漏洩したと言っている。
今回のパナマ文書には、合法・違法を含めて、40年間にこの法律事務所を経由して行われた金融取引の詳細が記載されている。データ量は、2.6テラバイトという膨大な量で、南ドイツの新聞社は、膨大な量のため、国際協調を呼びかけるようになったという。記載された取引案件は1,150万件で、関係会社は21万4,000社に上るという。現在も分析が進められているが、文書のなかには韓国人の名前も190名くらい載っているということで、関係者は戦々恐々している。今回のパナマ文書でわかってきた問題点は、どのようなことなのか――。
タックスヘイブンを使っていること自体が違法ではないが、今回の衝撃はかなりのものに発展するかもしれない。今のところ、タックスヘイブンは、課税逃れとマネーロンダリングに悪用された痕跡もある。
たとえばある企業が本国で10億円の利益が出たとしよう。タックスヘイブンにホールディングカンパニーをつくって、そこにロイヤルティーとして10億円を払ったとすると、本国では利益がないため、税金を払わず、タックスヘイブンでは税率はかなり低いため、小額の税金で済むことになる。このような問題が多国籍企業を中心に発生し、問題になっている。最近、国家の徴税権が弱くなっていると言う指摘もある。税収が少なくなると、政府は消費税などを引き上げることになり、税金逃れのしわ寄せは庶民に来るわけである。
今、世界的に貧富の格差が問題になっているなかで、タックスヘイブンは、結果的には富裕層だけが税金が安くなる機会を享受し、経済的な弱者はもっと不利になること結果をもたらす。今回のパナマ文書の漏洩をめぐっては、一部ではアメリカの陰謀説も囁かれている。ロシア、中国などを牽制する意味と、世界に散らばっているタックスヘイブンの資金をアメリカに持ってくるための布石であるという内容である。アメリカは2014年7月1日以降、FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)を実施することによって、アメリカ人が外国の金融機関に口座を持っていると、国税庁に必ず申告することになっている。この法律によって、スイスの金融機関などもこれ以上機密保持ができなくなっている。一方で、アメリカは外国の情報提供要請に応じなくてもいいような状況である。それを言い換えると、外国人が米国内のタックスヘイブン(ネバダ州など)へと資金を移すことになることを意味する。
このような狙いで、今回のことが意図的に進められているという指摘もある。いずれにせよ、私たちには今の世界を正確に理解したうえで、正しく対処することが求められている。パナマ文書が今後、今の問題を是正していくきっかけになることを望んでやまない。
(了)
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