2024年12月24日( 火 )

異色の金融再編、山口FG設立の影にいる90歳相談役(5)

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 「今も本店の豪華個室にいる田中氏だが、実は、接点がまったくない若い行員にはその存在をあまり知られていない」(OB)。その田中氏が、影響力を行使して経営トップの人事を左右したとなれば、事情が見えない行員には不自然に映り、組織のガバナンスにも支障を来す恐れがあるのではないだろうか。

布浦頭取の予見

 山口FGは16年3月期において、経常収益1,655億400万円(前期比4.1%増)、当期純利益322億9,500万円(同5.8%増)の増収増益となった。山口銀行単体でも増収増益で、経常利益347億円と当期純利益247億円は過去最高となっている。直近の業績を見る限り、山口FG社長と山口銀行頭取を兼務する福田氏に経営上の落ち度があったとは思えない。田中相談役との関係上における落ち度、すなわち下関ゴルフ倶楽部の半額プレー問題が、今回のトップ人事の背景に浮かび上がってくる。

office しかしながら、再編の荒波に襲われている金融業界で、いまだ90歳の相談役に支配された旧態依然とした組織が生き残れるのだろうか。山口銀行の定礎には、布浦眞作元頭取の直筆「百万一心」が刻まれている。この言葉は、三矢の教えを遺した戦国大名・毛利元就に由来し、「皆が力を合わせれば何事も成し得る」との意味である。布浦氏は著書に「何よりも大切なのは人であり、人の力であります。ことに折角人がいても、派閥闘争や勢力の引きずりおとしをやっていたのでは、何もならない」との言葉も遺している。現在の山口FGの状況を予見していたかもしれない。

 山口県と言えば、明治維新の主役である志士たちを育てた地だ。「動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し」と、後進の伊藤博文に評された高杉晋作は、徳川幕府におもねる恭順派の家老を一掃するクーデター『功山寺挙兵』を起こした。その後、幕府の第二次長州征伐に対抗し、これを撃退。幕府の権威は大きく失墜し、維新実現へ向けて社会が大きく動き始めた。同じクーデターであっても、以前の支配体制に帰した04年5月の頭取交替は、高杉晋作とは真逆。90歳の老人が、いまだに本店の個室に居座るという歪な状況をつくってしまった。

 ところで、現役を引退してもおかしくはない年齢の田中氏だが、毎日熱心に銀行へ出勤して何をしているのだろうか。「田中さんは、新聞や本を読むのが好きでね。本店に行けばコーヒーも昼飯も出てくるでしょ」(OB)。権謀術数の果てに勝ち取った豪華個室は、余生を過ごす至福の空間となっている。一方、福田社長退任の人事が発表される数日前、田中氏が住む社宅の表札が外れていたことから「ようやく引退か」との観測が流れている。6月29日に開かれる株主総会に、注目が集まっている。

(了)
【山下 康太】

<COMPANY INFORMATION>
(株)山口フィナンシャルグループ
代 表:福田 浩一
所在地:山口県下関市竹崎町4-2-36
設 立:2006年10月
資本金:500億円
経常収益:(16/3連結)1,655億400万円

 
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