2024年11月26日( 火 )

円高で観光客の爆買いはどうなるのか

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 2013年初期の「アベノミクス」スタート後、今年4月になって初めて日本のデパートにおける外国人観光客の消費額がマイナスに転じた。これは円安によるところが大きく、強い円相場を受けてこれまで「豪快に」買い物していた外国人観光客は、日本で高級時計やブランドバッグといった高額の商品を買わなくなった。だが、オムツやスキンケア製品などの高価でない商品は、引き続き人気を集めている。
 日本国内には、円高が観光産業の繁栄にとって脅威になっていることを危ぶむ声がある。

つまずいた「アベノミクス」

 年初以来、円の対ドルレートの累計上昇幅は12%を越えた。分析によると、日本政府は2020年をメドに訪日外国人観光客の人数と消費額がいずれも現在より倍増して、のべ4,000万人と730億ドル(約7億9,767億円)に達すると見込む。これは、目下好調とは言えない「アベノミクス」にとっても必要なことだ。だが願いとは裏腹に、持続的な円高を受けて、これまでに到達した絶対的な観光客数が減少し始めている。

shopping 英国紙「フィナンシャル・タイムズ」が紹介したSMBC日興証券の渡辺広エコノミストの話によると、「こうした動きはアベノミクスの限界や、弱い日本円への過度の依存を露呈するものだ」という。12年末に安倍晋三首相が登壇すると、一連の経済活性化政策を迅速に打ち出して日本経済の復興を促した。なかでも最も注目を集めたのは、金融緩和政策と急激な円の値下がりだった。
 今年第1四半期(1~3月)に、日本経済の成長ぶりは予想を上回って好調だった。内閣府が先月18日に発表したデータを見ると、国内の個人消費の伸びに後押しされて、同期の国内総生産(GDP)は前期比0.4%増加し、年率換算で1.7%増加した。だが多くの分析が示すように、円高が続けば、日本銀行(中央銀行)がインフレ目標の達成を目指して行ってきた努力が無駄になり、日本経済の復興が妨げられることになる。

 このほど閉幕した主要7カ国(G7)財務大臣・中央銀行総裁会議で、米国と日本は相場変動の問題で意見の一致をみなかった。日本の麻生太郎財務大臣は、最近の相場に現れた変動は取るに足りないものだとして、相場安定の重要性を強調した。だが米国のヤコブ・ルー財務長官は、関係国に競争的な通貨安が現れてはならないとの見方を示した。

スキンケア製品は引き続き人気商品

 データを見ると、今年4月に日本は200万人を超える観光客を受け入れ、アベノミクススタート以来の単月の最高を更新し、13年4月の2倍以上になった。日本のデパートに来店した外国人観光客は前年同期比7.8%増加した。だが、日本の小売産業における外国人観光客の消費額は同9.3%減少。このような対照的な数字を前にして、日本の小売企業の一部は焦燥の色を隠さず、これまで恐れていたことがついに起きたのではないかと懸念する。それはインバウンド観光客の4分の1を占める中国人観光客の消費スタイルが変化すること、大量買いが識別眼をもった「選択的な買い方」へと移り変わることだ。
 アナリストは、「これと関係がある重要な要因は、中国人観光客のなかに日本旅行が2回目、3回目という人がますます増えてきたことだ」と指摘する。

 次のような分析もある。4月初めに中国の税関が税関を通る物品に対して、これまでよりも厳格な検査制度を実施するようになったことも影響を与えた要因の1つだ。
 だが在日本中国大使館のサイトを通じて発表された通知・通告によると、日本を訪れる中国国民に対し、中国は2016年4月8日から越境電子商取引(EC)の小売輸入商品に対する税金政策を実施し、同時に個人持込・郵送税法式の政策の調整を行うことを明らかにした。新政策の調整は主に越境ECに対するもので、個人の海外での買い物の免税限度額には変化がない。再入国する中国人観光客が海外で自分が使用するために買った合理的な数量の物品は、総額が5,000元(約8万3,458円)以内であれば、免税扱いとなる。限度額を超えた場合、自分で使用する合理的な数量の物品については超過した部分に対して個人持込・郵送税を徴収し、合理的な数量でない物品については貨物に応じた税金を徴収するか返品することになる。

 ぜいたく品の売上は勢いが止まったが、中国人観光客は引き続き盛んに化粧品を購入する。フランスのクレディ・リヨネ証券会社東京支店のオリバー・マシュー小売アナリストは、「購買のリズムには引き続きひそかな変化がみられる」と話す。たとえば日本の有名化粧メーカーの資生堂は、外国人観光客の年間売上高目標を30%引き上げて340億円とした。

 13年から今年初めまでの間、持続的な円安が日本の観光産業に極めて大きな影響を与えた。観光客にしてみれば、日本での旅行費用が非常に安く魅力的なものになり、一連の人気ぜいたく品の価格は、一度は香港地区を下回った。

 匯豊持ち株有限公司がこのほど発表した報告書によると、アナリストは、円相場の上昇が日本でぜいたく品を買おうとする中国人観光客の意欲を損なうことになるとの見方を示す。また別の分析では、中国人観光客の旅行先の選択では国内外の価格差が影響し、円高により中国人観光客の日本への興味がある程度低下したほか、日本の一部商品の価格は中国と変わらなくなったという。また同報告書は、今年は日本を訪れる中国人観光客数が減少すると予想する。

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