杭打業者税金ピンハネの実態~福岡市発注工事(1)渦中の末広産業とは
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福岡市発注の公共工事において、納税者をあざ笑うような杭工事業者の受注実態が発覚した。問題の工事業者は福岡市西区に本社を置く末広産業(株)(佐藤九一郎代表)。従業員わずか5~6名、工事用の機械も持たない同社が一次下請に入り、工事代金の一部を事実上ピンハネしている状況だ。NetIB-Newsは、同社が施工に関与した公共工事の関連文書を福岡市に情報公開請求。入手した資料から、過去3年間の市発注工事において、同社が施工に関わった26件すべてが一次下請であったことが判明した。施工体系図や下見積書からそのありえない実態を報告する。
元請ゼネコンも首かしげる
全件一次下請。そして、多くが大手の上に居座る形だ。施工能力からして、どうみても不自然。この受注形態はいかにしてできあがったのか。特定ゼネコンから末広産業に下請発注が行われていれば、ゼネコンとの癒着を疑うこともできる。しかし、表を見ての通り、元請はバラバラ。特定ゼネコンと末広産業のつながりはそう強いものではない。そうなると、やはり大手杭打ちとのつながりか――。同社の受注実態を元請ゼネコンに示し、施工当時の様子を聞いた。「いつも大手杭業者に仕事をお願いするが、なぜかそこが末広さんを指定してくる。商社を挟んでほしいと」――ゼネコンの担当者も首をかしげる状況。わからない。このようにして、一連の取材は始まった。
施工体系図より
表面上は杭打下請一本
まず、同社の企業概要を記しておく。同社は1985年7月に、創業者である藤田浩氏が土木工事、とび・土工工事を目的に設立。86年5月に、取引先でもある日進コンクリート工業(株)出身の現代表佐藤九一郎氏が代表取締役に就任。主に手がけるのは建物の基礎工事である杭打ち工事。2015年3月期の完工高の内訳では、杭打ち工事のとび・土工工事が99.6%、残り0.4%が土木工事である。そのすべてが下請工事であり、受注先は地場有力のゼネコン、大手杭打ち業者。施工物件は官公庁を主体に、民間のマンションや老健施設など幅広く、施工エリアも北部九州および山口までと広範囲に及んでいる。7月1日より、西区拾六町の新社屋へ移転し、業務を開始している。
劇的な業績改善
過去の業績を見てみると、2000年代初めは売上高4億円から5億円台を推移。最終利益もわずかで、かろうじて黒字を確保する状況にあった。それが表のように、業績は一変する。13年3月期に売上高は10億円を超え、利益率も大幅に向上。15年3月期には、売上高は過去最高となり、羨ましいほどの利益を残している。自己資本比率約40%、流動比率、当座比率ともに200%を超えている。16年3月期は、売上高15億8,000万円に対し、税引き後利益4,320万円を見込んでおり、引き続き業績は好調のようである。
長年、一進一退を続けていた業績が近年、劇的に改善されている。直近の取材で佐藤代表は「営業先をゼネコンから設計事務所へ変えたこと」を好調理由に挙げているが、この実態を見る限り、決してそれだけではない。業界関係者も「ふつうは短期間でここまで売上は上がらない。利幅も大きい。」と不思議がる。技術を磨き、新工法を確立し、数多く採用されれば、短期間での増収はあり得る。重機さえ持たない同社にそれができるとは思えない。
好調の理由。それが今回発覚した受注実態の真相にあるとみる。(つづく)
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