【名門・筑女の異変】不可解な不動産取引、阿蘇の研修施設を安値で売却?(中)
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4分の1以下の値で売却?
一方、同時期に、既存の研修施設「光雲荘」(熊本県阿蘇市乙姫)の売却が進められていた。1981年6月に新築された鉄筋コンクリート造2階建て、延床面積2,220m2。用地は宅地部分約3,426坪、原野部分約3,103坪。この土地・建物を、介護施設や保育園を運営する社会福祉法人の事業運営を行う熊本市の民間企業H社から計6,100万円で購入したいとの申し込みがあった。H社は介護施設として改装する考えで、4月末までの引渡しが望まれており、話は順調に進んでいたが、平成28年熊本地震が発生したことによって売却の話はストップしたという。
この「光雲荘」の売却話に教育を担う公的機関としての在り方から疑義が生じてくる。同学園が2015年3月9日に作成した遊休資産一覧によると、光雲荘の14年度末における簿価は、土地、建物、構築物の合計で2億6,077万円。H社の購入希望価額の実に4倍以上である。H社は、宅地部分を坪2,000円、原野部分を坪40円で試算して土地評価を697万円とし、建設当時の標準的な建築価額(坪45.8万円)から建物評価を5,246万円とした。
つまり、すでに所有している研修施設の土地・建物を簿価からすれば破格の安値6,100万円で手放そうとし、一方で4億円の借り入れまでして別に研修施設用に土地を購入するという流れだ。遊休資産の売却は、国(文部科学省)からの要請でもある。国や地方自治体の財政が逼迫するなか、補助金を受ける立場として、使い道のない遊休資産は金に換えなさいということ。しかし、筑紫女学園は、用地目的は同じ「研修施設」でありながら、すでに施設がある用地を手放して別の用地を購入。かえって費用が高くつく結果となっている。
「福岡歴史の町」跡地で研修施設を建てる場合は、土地購入費として約3億円が必要。そこには旧施設の廃墟の解体費も含まれる。方や「光雲荘」は、H社が既存の建物を改装して利用する考えであった。経費節減の観点から、新たに土地を購入し、建物を新築するのではなく、すでにあるものを改修・修繕して利用していくべきではなかったか。簿価と売却予定金額の大きなズレも問題視されるものであり、国や地方自治体などから毎年10億円弱の補助金を受けている以上、不動産取引においても適正なものでなければならないことは言うまでもない。
筑紫女学園の研修施設は光雲荘のほかにもう1つ。主に中学・高校が研修で利用していた福岡市早良区脇山の「楽山荘」がある。この施設は、1964年に修練道場として建てられ、当初、中学生・高校生の新入生研修、高校3年生の1日研修が行われていた。10年前頃には、高校2年生の研修やクラブ活動の合宿で利用され、1日研修では、午前中に勤行、法話、ビデオ教材学習などで「生命(いのち)」の教育が行われていたという。浄土真宗の教えを建学の精神に掲げる筑紫女学園らしいカリキュラムと言えるだろう。
(つづく)
【山下 康太】<INFORMATION>
学校法人 筑紫女学園
代 表:長谷川 裕一
所在地:福岡県太宰府市石坂2-12-1
創 立:1907年
設 立:1945年
総資産:210億8,442万円
帰属収入:(15/3)40億2,259万円関連キーワード
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