【名門・筑女の異変】運営の混乱に関係者やOGが不安の声(前)
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学校法人 筑紫女学園の運営をめぐる混乱は、関係者にも不安を広げている。1907年の創立以来、筑紫女学園は浄土真宗の教えに基づく人間教育を行ってきた。その「建学の精神」が揺らいでいるのではないか。関係者からは、学園の将来を憂う声が上がっている。
前理事長に崩された運営と現場の信頼関係
そもそも混乱を引き起こした原因は、前理事長の笠信曉氏による独善的かつ強引な運営にあったというのが、学内関係者の一致した見方だ。その前後では、学内の雰囲気がまったく違っていたと、長年教員を務める人は語る。
「親鸞聖人の教えに基づいて人間を教育していくというのは、欠点を持っている人間同士が互いに補い合って、よりよい社会を作っていくということ。前理事長が就任する前は、学園や教員もそのような自覚を持ち、みんなで学校をどうしていくか考えていた」。
教職員の自主性が尊重されていた事例として、2007年の学園創立100周年記念イベントとして開催された「本願寺展」がある。事業担当の教職員が発案し、九州国立博物館に開催を提案したという。浄土真宗本願寺派も主催に加わり、宝物を提供するなどして協力。教員は「展覧会には多くの浄土真宗関係者が来場し、親鸞聖人750回大遠忌記念として全国で『本願寺展』が開かれるきっかけになった。教職員が地域貢献のためとみんなで話し合い、頑張ったおかげだった」と振り返る。
この準備段階は笠氏が理事長に就任する前で、理事会と教職員の間には良好な協力関係が保たれていた。しかし、笠氏が理事長になってから教職員には何も説明しないまま、氏が一方的に協力するように求め、独善的に運営を進める体制になっていったという。教員は「100周年事業では2年前から教職員が準備を進めていた。来年5月の110周年については、8月になっても教職員は何も知らされていない」と嘆く。
かつて理事を務めた経験のある男性は、「笠氏に反発した教職員が何回も辞任要求を突き付けた。両者の対立は硬直状態に陥り、笠氏の後任である長谷川裕一理事長になっても、それは続いている。笠氏やその運営体制を引き継いだ長谷川氏に反発して、すでに何人かの教員が辞めてしまっている」と内情を明かす。なぜ、これほどまでに深刻な状況に陥ったのか。40年以上にわたって同学園に勤めてきた職員は、「学長選をめぐるトラブルが原因」と指摘する。
かつて同学園の学長は、推薦委員会が推薦した候補者から教職員の選挙によって絞り込み、理事会がそれを承認するかたちで選ばれていた。しかし笠氏は自ら推薦した候補者が選ばれる見込みがないと察すると、選挙の結果を無視。理事会を強引に運営して自分の推薦者を学長に就任させる行為におよんだという。これに教職員が異議を唱えると、一方的に学長選任規定を変更し教職員による選挙を外した。つまり学長選から教職員を排除したのである。
職員は「笠氏は自分に反対する人を許さない」と憤る。会議などで自分に反対する意見が出ると、顔を紅潮させ大きな声で怒鳴りつけることもあったという。「落ち度もないのに、自分に反対したという理由で降格された教職員もいた」(職員)。さらには、学園にいづらくなるような状況に追い込んでいく。これまで笠氏が外部から連れてきて学長に就任した人たちでも、氏による強引な運営と教職員との対立という内部の状況を知り、笠氏に対抗する姿勢を見せるようになる。すると、笠氏は切り捨てるような姿勢に転じる。ある学長経験者は「退職理由は笠氏と別」と断りながら、「学園の運営は最も生徒と身近な教職員の意見を聞くべき」と心痛を吐露した。
(つづく)
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