暴力革命での政治刷新など誰も考えていない
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、政府の役割についての考え方と、政治形態の移行の方法との2つの問題について述べた、8月21日付の記事を紹介する。
2つの問題を混同するべきでない。
1つの問題は、政府の役割についての考え方である。これを私は「弱肉強食」対「共生」と捉える。
自助・自己責任・機会均等を基軸に、結果における格差を容認する立場がある。市場原理にすべてを委ねる市場原理主義。新自由主義の立場。
これに対して、共助・生存権・再分配を基軸に結果における平等、あるいは最低保障ラインの拡充を重視する立場がある。共生重視主義、友愛主義とでも呼ぶべき立場だ。政府は経済活動に介入しないという立場と政府が経済に介入して「再分配」を行うという立場の対立である。
もう1つの問題は、政治形態の移行の方法に関わる問題だ。
議会制民主主義の制度を採用しているなかで、選挙における多数勢力獲得を通じて政治の変革を実現するという立場と武力による権力の奪取を目指すという立場の対立である。「共産主義との戦い」という場合に、両者が混同されている場合が多い。
敗戦後の日本の統治はGHQによって行われた。GHQによる日本統治の初期においては、GHQ内の民生局(GS)が実権を持った。ケーディス、ホイットニー、マッカートなどの人物が日本占領政策を主導した。この下で、戦後民主化が断行された。農地解放、財閥解体、労働組合育成、教育改革などが断行され、日本国憲法が制定された。しかし、1947年を境に、米国の対日占領政策が大転換した。民主化措置は中断化され、占領政策の基本は「民主化」から「反共化」に転換した。日本の「民主化」を主導した人々は、「共産主義者」として批判されていることも多い。
ソ連の事例を見れば、革命が行われ、その後「自由主義」が失われた現実がある。このことから、「共産主義」に対する警戒が生まれるのは当然のことではある。しかし、このことから、短絡的な論理の飛躍が行われていることが少なくない。
それは、「自由主義」を修正する、あるいは「自由主義」に制限を加える「修正資本主義」、政府の「再分配機能」を重視する政治主張を、単純に「共産主義」と総括する乱暴な論理が広く観察されることである。日本政治をどう変えるのかという問題を考察するときに、この問題がそのまま援用されることも少なくない。
安倍政権が推進する「弱肉強食推進の政策」の是非の問題だ。多くの主権者が「弱肉強食主義」に反対して「共生主義」への路線転換を求めている。小選挙区制度のような選挙制度の下で「弱肉強食主義」の勢力を劣勢に追い込んで、「共生主義」の勢力が政治権力を確保するためには、「共生主義」を唱える政治勢力が大同団結することが必要である。
そのときに、安倍政権が持ち出すのが、「暴力革命を目指す共産主義勢力」が「共生主義」勢力のなかに存在するという主張である。本当に「暴力革命を目指す勢力」が存在するなら、「共生主義」を唱える主権者の多くは、そのような勢力と手を組むことは拒絶するだろう。このような重大な問題について、憶測や虚偽の主張は有害無益である。
主権者の大多数は暴力革命ではなく、議会制民主主義の下での政治刷新、政治変革を求めている。大同団結を推進してゆくうえで、この点を明確にしたうえで、大同団結を推進してゆくべきであると思う。
※続きは8月21日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1519号「GHQ・GS主導日本民主化否定は本質的誤り」で。
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