国民生命より五輪道路が大事とする基本姿勢
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、2020年開催の東京五輪における招致委員会による不正疑惑や五輪組織委会長の森喜朗氏の発言について言及した、9月5日付の記事を紹介する。
東京五輪の招致委員会は国際陸上競技連盟元会長で国際オリンピック委員会(IOC)前委員のラミアン・ディアク氏の息子に関係するシンガポールの口座に、2013年7月と10月に「東京2020年五輪招致」という名目で2億2,300万円を送金している。招致委員会が送金したのはシンガポールの「ブラックタイディングス社」である。「東京2020年五輪招致」の「コンサルタント費」だ。「コンサルタント費」とは何か。恐らく「裏工作」費ということなのだろう。
オリンピック開催地決定はIOC総会での投票による。投票で勝つことにより招致が実現する。招致を目指すのは、招致で金儲けをするためである。
アスリートは五輪で勝つことを目標にし、政府からできるだけ多くの補助金を得ることを目指すが、周辺にいる人々が目指すものは「金」である。「金メダル」ではなく「カネ」だ。
五輪のために設備を作れば設備関係企業が潤う。五輪のための広告事業を行えば広告代理店が儲かる。これらの事業で口利きを行えば「コンサルタント」料が入る。欲得に憑りつかれた者が血眼になって行うのが招致活動である。極めて不純なものだ。その象徴とも言えるのが、招致に関わる「贈収賄」だ。
日本の法律は公務員だけを対象にした犯罪としているが、納税者の立場からすれば、自分が収めた税金が賄賂になって使われることを承服できないだろう。どこかの誰かが賄賂を受け取り、私腹を肥やすために、なぜ税金を使うのか。これを肯定する納税者はいない。
そのような資金であるから、途中でどのように、誰かが「中抜き」をしているのかも分からない。フランスの法律は民間の贈収賄も犯罪としており、フランス当局が捜査していることから今回の問題が発覚した。このようなことを素通りさせている日本の対応がおかしい。
そのオリンピックに関して、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、五輪までの開通を目指す環状2号道路の建設について東京都知事に「やるならやる、やらないならどういう方法があるかを示してもらいたい」と伝えたことが報じられている。築地市場の豊洲への移転を決定したことに伴い、築地市場を通過する環状2号線の建設に支障が生じるためだ。小池都知事は「東京大会に遅延なく進めるよう指示しているところだ」と返答したと伝えられているが、クレームをつける勘違いの老害は深刻だ。
森氏は「五輪の準備はここまで順調に進んでいるので、支障のないようやってもらいたい」と、五輪予算の検証についても牽制したが、「ここまで順調に進んでいる」とは聞いてあきれる。
必要のない無駄な新競技場建設をさんざん迷走させた上、新たに決定した建設案でも聖火台がないという大失態を演じている。エンブレム決定での関係者の癒着が発覚し、大混乱したあげく、新しいエンブレムは喪章との評判も生まれている。最大の問題は費用だ。招致時の2013年1月時点の立候補ファイルでは、組織委員会の予算(大会の運営に直接関わる予算)が約3,500億円と見積もられていた。
ところが、この点について森喜朗氏は、7月22日にこう述べた。「ロンドン五輪は2兆円、ソチ五輪は4兆2,000億円の経費がかかった。そのぐらいの金額になるんです」。
7月25日の組織委理事会では、「招致時の見積もりに問題があった」とも述べている。利権まみれ、と言うより、利権のための五輪を、不正に満ちた手法で日本で開催する必要性はゼロである。まして、五輪のために道路を作るから、有害物質に汚染された場所への市場移転を強制するなど言語道断だ。
森喜朗氏に五輪組織委会長を務めてもらいたいと思う主権者は皆無に近いのではないか。主権者は森氏の更迭を求める活動を活発化させるべきである。
※続きは9月5日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1532号「NHK改革基本は受信契約任意性への移行だ」で。
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