2024年11月26日( 火 )

現実化しつつある北朝鮮の核の脅威

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 北朝鮮は9日、5回目の核実験を行い、核弾頭の爆撃実験に成功したことを明らかにした。また北朝鮮は声明を発表し、「小型化、軽量化された弾頭を、必要なときに必要なだけ生産できる技術レベルに達した」とも宣言した。韓国政府それからアメリカの情報機関では、北朝鮮の核能力については、今後、かなりの脅威になり得るとしている。

 北朝鮮による核開発は、1回目は2006年からスタートし、前回の核実験は今年の1月に行われた。ところが、前の実験からわずか8カ月後という短い期間で5回目の核実験を行い、その開発スピードの速さで全世界を驚かしている。北朝鮮の核実験に対して、今まで韓国ではどちらかというと、「まだまだ時間がかかる」とか、「それほど心配するレベルではない」という態度だったが、今回の核実験について、韓国政府は北朝鮮の核能力がかなりアップしており、現実的な脅威になるという認識を示している。

 今回の核実験は、9月9日の北朝鮮の建国記念日に合わせて行われたようだ。規模もこれまでのなかで最も大きく、韓国の情報機関によると、TNT火薬換算で10キロトン程度とみられている。

photo 北朝鮮は朝鮮戦争で負けて以来、アメリカの一撃をずっと恐れていた。朝鮮戦争でのアメリカの爆撃で壊滅的な被害を経験した北朝鮮としては、米国の爆撃リスクを取り除き、体制を安全に守る方法をずっと模索していた。広島、長崎に原爆が投下され、原爆の威力を記憶に残していた北朝鮮の金日成は、核兵器の開発を模索し始めたのだ。
 そのような意味で、北朝鮮の核開発歴史は1950年代に遡り、その後、政権が変わっても北朝鮮は核開発にずっと執念を燃やしてきた。それに、北朝鮮は既存の戦闘力では韓国と比較して、かなり劣勢に立たされている。北朝鮮のGDPは韓国の60分の1だし、北朝鮮の人口は韓国の半分しかない。もちろん北朝鮮は19万人の特殊部隊を抱えており、韓国にとってはかなりの脅威ではあるが、北朝鮮は既存の戦闘では、韓国に容易に勝てないという状況であった。
 ところが、北朝鮮が核兵器を保有するようになると、超大国アメリカからも一目を置いてもらえるようになるし、韓国との戦力比較でも、北朝鮮は圧倒的な優位を占めることができる。そのため、北朝鮮はどのようなことがあっても、今後も核開発だけはやめないだろう。今でも北朝鮮は、核保有国として認めてもらおうと必死である。

 それでは、北朝鮮の核開発をもう少し詳しく見てみよう。

 核開発には、2つの要素が必要になる。核弾頭の開発と、その核弾頭を運ぶことができるミサイルの開発である。北朝鮮はこの2つを同時並行的に推進してきた。
 北朝鮮は、まず核弾頭の少量化、軽量化に成功しただけでなく、多様な核弾頭を標準化して、大量生産できるようになったと言っている。今回の実験は、新しく開発した核弾頭の威力を測るための爆発試験であったのだ。起爆装置を500~600kgに小型化するのに成功したなら、核兵器の完成が近いことを意味する。
 韓国の情報機関でも、核弾頭の開発が予想よりも早く進んでいると判断している。一方、ミサイルはすでにいろいろなかたちで実験を繰り返し、射程距離と精度を上げている。北朝鮮のミサイルは、韓国や日本は言うまでもなく、グアムなどの米軍基地まで射程圏にしている。北朝鮮は大陸間弾道ミサイルを開発し、最終的にはアメリカ本土を狙うと言っている。

 それに、射程距離の問題を解決するとともに、どこで発射されるのかが特定できないようにするために進められているのが、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)である。仮に潜水艦が太平洋に出て、そこから発射すれば、距離の問題もなくなるし、どこで発射したのかわからないため、報復もできない。
 しかし現実問題として、北朝鮮の潜水艦がこのようなレベルに達するまでには、まだ時間が必要であるようだ。潜水艦から核弾頭ミサイルが発射されることは、こちらとしては、かなりの脅威である。まだ時間があるうちに、早く対応策を練る必要があるだろう。

 それから技術的な話になるが、核弾頭の場合、大気圏に再突入する際に、弾頭にかなりの熱が発生するようだ。普通はその熱で弾頭が爆発することになるが、それを爆発させずに再突入できるような耐熱技術が必要である。北朝鮮がそのような技術まで確保しているかどうかはまだ確認できない。
 いずれにしても、北朝鮮にとっては体制維持のための一番有効な手段である核開発に、今後もこだわることだろう。

 それでは最後に、今回の北朝鮮の5回目の核実験に対し、各国はどのような立場で、どのような対応策を考えているだろうか。

 中国は、何よりも北朝鮮の体制が崩壊しないことを望んでいる。なぜかというと、同じ共産主義の国家であるし、北朝鮮が崩壊すると、北朝鮮から難民が中国に流れ込むし、アメリカと接することになるかもしれないからである。北朝鮮が崩壊するよりは、むしろ北朝鮮の核開発の方が、中国にとっては選択しやすい条件であるという話だ。中国は一応驚いたような反応を示しているが、実は今回の核実験も、事前に北朝鮮から通知があったことだろう。核開発の支援をはじめ、制裁のなかでも北朝鮮が延命できるのは、何よりも中国の存在があるからだ。北朝鮮を潰そうとすると、中国はいくらでもそれができる地位にあるが、中国の国益にとっては北朝鮮の崩壊は好ましくないため、むしろ核開発を見て見ぬ振りをしているのだ。
 しかし、北朝鮮は中国さえも信頼していない。頼るのは核武器しかないという信念である。中国が北朝鮮の脅威になれば、中国さえも北朝鮮の核攻撃の対象になり得るのであるが、中国にはそのような自覚はないようだ。

 今回の核実験で脅威が高まったのは、韓国と日本であろう。韓国も日本も核武器を保有していないため、北朝鮮にはかなわない。もちろん韓国も日本も核武装しようとすれば、いつでもできるだけの技術を保有している。実際に、一部では核武装論を主張しているが、現実的ではないだろう。

 安保は国の存亡に関わる大事なことなので、米国、日本、韓国が緊密に協力して、北朝鮮の核脅威に対応すべきである。まずは、外交的にどのようにすれば核問題を解決できるかをはじめ、東北アジアでの緊張関係を緩和するため、早急に動いていく必要がある。

 

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