2024年12月22日( 日 )

ニーズ即応と市場深耕は不変の戦略(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)ダイショー

多様化するニーズに即応し年間300の新製品を開発

 1966年の創業以来、「焼肉一番」「味・塩こしょう」などのロングセラーで、今や全国ブランドとなった(株)ダイショー。現在、地元福岡と東京の2本社制を敷き、九州に3、関東に1の生産拠点を有している。
 製品は生鮮三品向けの調味料をはじめ、即食(インスタント)食品、業務用惣菜向け製品など常時1,300品目。加えて、多様化する消費者ニーズに即応するため、年間で300もの新製品を開発する。

syohin 「お取引先さまからは差別化のために『独自の製品を提供したい』との要望が絶えません。ですから、それを開発部門にあげて製品化するものと、こちらが独自で企画するものとがあり、どうしても品数は増えていきます。製造する品目は配送地域別ですが、設備がその工場にしかない場合はそこで行います。たとえば、『スープはるさめ』は福岡第二工場で製造しています」と、自ら製品開発経験もあり、今年4月に就任した阿部孝博社長は語る。

 本社機能を2つ持つメリットは、まず首都圏には取引先の本社が集中するので、商談がしやすく全国的な視野で戦略を考えられることだ。そして東日本大震災で関東工場が被災したケースのように、福岡本社が人員の受け入れを含めてバックアップし、3工場での集中生産も可能にした。結果論だが、リスクが分散できる利点は大きい。

 一方で福岡は創業の地でもあり、原材料の調達先や金融機関などとは長年の信頼関係を築いている。通信インフラの発達でデータのやりとりが円滑になり、両本社の2ウエイコミュニケーションを可能にした。本社機能が2つでもデメリットにはならないようだ。

 製品開発部門も両本社に置かれていて、互いが顧客の要望や市場ニーズに基づいた製品づくりに当たっている。福岡と東京で切磋琢磨することで、有能な人材が育成されていくことは、メーカーである同社にとっては大きな資産であり、自信にもつながると言える。

味・塩こしょうは調味料の定番。企業努力で「お買得」感を維持

 68年の発売以来のロングセラーで、同社の顔とも言うべき製品が「ダイショーの味・塩こしょう」だ。これは創業者の金澤俊輔氏が精肉店でとんかつ用の肉に塩と胡椒を別々に振る光景を見て、「一度にできると効率がいい」との閃きで開発に至ったものという。
 その後、ステーキや焼肉など牛肉を使った料理が家庭に浸透するに従い、味・塩こしょうもクッキングに欠かせない調味料に育っていった。

 「胡椒はお肉の臭みをマスキングする上で欠かせません。同時に塩は味付けの基本です。味・塩こしょうはこれにうま味調味料を加えた基礎調味料に近いものでしょうか。お肉は育ち盛りのお子さまから元気で長生きしていただきたいお年寄りまでに必要なので、あらゆる世代が美味しく感じるような味にしています」(阿部社長)。

 塩と胡椒とうま味調味料の絶妙なバランスで、導き出された味は、やや甘め。辛めが好みなら塩や胡椒を別に加えればいいし、別の香辛料までを混合すると用途が狭まってしまう。同社が考え出した三素材の黄金比率がロングセラーの秘訣なのかもしれない。
 価格は胡椒が輸入品であるため、発売当初は為替レートの関係で、現在より割高だった。それが円高の影響で次第に下落し、今の店頭価格に落ち着いた。

 ところが、胡椒は国際製品で相場に左右される。しかもコーヒーと同じ畑で栽培され、価格変動で生産比率が変わっていく。中国の経済発展で需要が増え、価格は高騰。単一の産地分だけでは賄いきれず、ベトナムやブラジル等からも輸入せざるを得なくなっているという。

 これに昨今の円安が影響して、コストは上昇しているが、販売価格は据え置かれたままだ。スーパーの店頭で見かける1本200円程度の「お買得感」は、同社の企業努力の賜物と言えるだろう。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代表取締役会長:松本 洋助
取締役社長:阿部 孝博
所在地:福岡市東区松田1-11-17
設 立:1966年12月
資本金:8億7,000万円
TEL:092--611-9321
URL:http://www.daisho.co.jp/

<プロフィール>
abe_pr阿部 孝博
1957年8月福岡市生まれ。山口大学農学部卒業後、1981年10月、㈱ダイショーに入社。研究開発室、工場長を経て、96年6月取締役就任。常務取締役、専務取締役、取締役副社長を歴任後、16年4月取締役社長に就任。趣味は科学史関連の読書。

 
(後)

関連キーワード

関連記事