2024年12月23日( 月 )

中国経済新聞に学ぶ~「中パ経済回廊」計画を現地に見る

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 中国政府が提唱している「一帯一路」戦略の計画に、新疆南部を起点とする中国パキスタン経済回廊(以下、中パ回廊)の建設があるが、これは中国大陸からインド洋に抜ける出口となるものである。同時にインド洋を通ってヨーロッパに通じる経済道路でもある。

china-min この計画が発表されてすでに2年たつが、その後どうなっているのだろうか――。中国経済新聞取材班は8月下旬、新疆南部の都市、カシュガルを訪れた。さらにカシュガルから険しい山岳地帯を超え、中国とパキスタンの国境に達した。中パ回廊について、現場に立って全面的な考察を行い、中国がインド洋に通じる戦略を決定した真意が理解できた。

 2013年5月、李克強総理はパキスタンを訪問中、北はカシュガルから南はパキスタン・ダワダル港までの経済大動脈の建設計画を提案。中国とパキスタンの相互利用により、中国大陸と海洋を合わせた中パ回廊の遠大な計画を推進することになった。
 中パ回廊の起点はカシュガル、終点はパキスタンのダワダル港で、全長3,000km。この計画では、中国にインド洋とアラビア海への出口ができる。道路、鉄道、石油パイプラインと光ファイバーのトンネルを含む貿易回廊で、「一帯一路」の重要な部分になっている。中パ両国は回廊に沿って交通網や電力設備を建設する。総工費460億ドル、2030年の完成を目指している。

 元駐タジキスタン中国大使は中国経済新聞の取材に対し、「中パ回廊は中パ両国のみならず、中央アジア、南アジア、北アフリカ、湾岸諸国にも影響する」と述べた。
 また、「カシュガルから中パ国境のクンジュラブへの高速道路と鉄道は、中国とアフガン、タジキスタンの港につながり、これは両国間唯一の港でもある。そのため中パ回廊が建設されれば、中国は、中東から輸入する石油天然ガスを、東南アジアのマラッカ海峡を迂回せずに、直接パキスタンのグワダルからパイプで新疆のカジュカルに送ることができるようになる。中国から中東やアフリカへ送る商品も、中パ回廊を利用することが可能だ。上海からパキスタンやインドまで、海運では少なくとも20日かかる。しかし中パ回廊が開通すれば、上海からパキスタンのグワダル港まで5日もあれば到着する。もし高速鉄道ならば、3日で到着する。そのワダル港から海運で中東やアフリカまで行けば、中国とアフリカ間の物流を大幅に短縮できる」とも述べた。

 さらに大使は、中パ高速鉄度と高速道路がタジキスタンに通れば、ロッテルダム港から中国江蘇省の連雲港まで達する(欧亜ランドブリッジと呼ばれる)。そのため中央アジアに経済の繁栄をもたらし、中央アジア地区とヨーロッパ、中国経済の交流を促進する。この構想によると、中パ経済回廊によって恩恵を受ける人口は30億人にも達する。
 この広大な計画に対し、中国政府は大きな決断を下した。中国政府は、新疆など内陸地区は地理的に不便なため、これまで経済発展の機会を見つけられずにいた。中パ回廊建設後は、孤立した新疆南部地区がインド洋とつながる中国の交通の要衝になるばかりでなく、石油化工産業や物流を発展させ、中国内陸地区の経済の発展を促進することになる。同時に、中国は中パ回廊を通じてインド洋への出口を持ち、グワダル港は中国と南アジア、中東、アフリカを結ぶ国際物流主要港となる。

 中パ回廊の計画実施には、当然ながら巨額の資金が必要だ。パキスタンには中国と共同で建設する資金はない。情報によると、460億ドルの建設資金は、中国政府とAIIB銀行から調達するという。
 パキスタンのシャリフ首相は8月29日の中パ回廊サミットで、「中パ回廊は共同の目標と抱負を基礎とした新たな発展の道である。これらは独特の経済発展と国際合作のモデルを基礎に打ち立てられるものだ。この地区では、過去に多くの衝突と略奪を経験した。今、新たなページを開き、平和と繁栄を築き、貧困、失業、未発達などの難題を解決する」と語った。また、「460億ドルというのは経済学上の額に過ぎず、中パ回廊の貢献と影響はこの数字よりさらに大きいものである」とも言う。

 2015年4月、中国の習近平主席はパキスタン訪問中に、パキスタン「1号鉄道幹線」への支援に関する協議に調印した。これは、中国が100億ドルを出資して1号鉄道幹線を首都カラチから北の中パ国境のクンジュラブへ延長し、さらに信教のカシュガルに続く全長1,726kmにおよぶ鉄道計画だ。

 取材班は、中パ回廊の建設には多くの困難がともなうことを発見した。以前、中パには両国が建設した自由貿易区があり、経済回廊を試みたことがあった。しかし安全、交通、電力などの問題があり、いまだ十分利用することができずにいる。パキスタンと中国を結ぶ陸上の「生命線」カラコルム道路がその例だ。この道路は1960年代に建設され、全長1,224km、海抜600~4,700メートルにある。長年修理されず、加えて春の雪解け、夏の降雨などによってたびたび交通が遮断され、1年のうち半年は通行不能である。現在、中国路橋工程公司がこの道路を修復・拡張中であるが、工事は大変困難な状況だ。この険しい山岳地帯に高速鉄道をいかに建設するか、その工程では技術的な面だけでなく、作業員は高山病を克服しなければならない。

 しかし、中国政府は15年以内に、この困難な中パ回廊を建設することを決定した。この回廊が建設されて、初めて「一帯一路」戦略が実現するとも言えよう。

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