2024年12月23日( 月 )

【名門・筑女の異変】卒業直後に提訴、15歳の少女に容赦ない取り立て

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通知書に同封されなかった誓約書

kaigi_img-min 学校法人筑紫女学園が、運営する中学校の卒業生を相手に奨学金(免除された授業料など)の返還を求める訴訟を行っていたことがわかった。以下、裁判記録によると、被告となった卒業生は、授業料などが免除される「特別奨学生」として筑紫女学園中学校に入学。同法人の中学・高校(6カ年)に在籍するという規定に反して他の高校に進学した。2014年4月23日、同法人は、3年間分の授業料などの免除額169万9,000円の返還を求め、この卒業生を提訴。裁判は、福岡高裁までもつれ込み、15年7月16日、最終的に福岡地裁の判決に基づき、卒業生側(被告およびその両親)が99万6,000円を支払う形で和解した。

 争点の1つは、校則堅守、高校進学、規定違反の場合の奨学金返還などを誓う「特別奨学生誓約書」の受け渡し時期。この誓約書が卒業生側に渡されたのは11年4月8日の入学式の後。卒業生の父親宛てに1月19日に送付された特別奨学生採用通知書には、建学の精神、諸規則順守や個人情報の取扱いなどに関する入学者誓約書は同封されたが、同法人側は「特別奨学生誓約書」の同封を忘れたという。卒業生側は、「他の中学校への入学を選択することができない入学式の日に、不意打ち的に誓約書を渡した」などとし、奨学金返還規定について承知せず、その後も同誓約書の提出を行わなかった。

 通常なら1月に送付されるという「特別奨学生誓約書」について、同法人側が1月から4月まで同封忘れに気づかなかったという不自然さから、卒業生側は不信感を募らせたという。福岡地裁も、この誓約書の受け渡しについて「不誠実で信義にもとる」と判断し、同法人の請求額から1年分の授業料と入学時の施設費など計70万3,000円分を減額した。

 また、卒業生側が、他の高校への進学を決めた理由は、国立大学やその医学部を志望する卒業生に対し、学校の授業が対応できておらず、さらに副校長との面談で高校での授業料など免除が確約されなかったことで不安を強めたことが大きかったようだ。卒業生は他の中高一貫校も合格していたが、保護者は入学前に卒業生の志望大学に対応できるか学校側に確認したうえで同校を選択したとしている。

 誓約書という重要書類の送付ミスや学生の教育ニーズに応えられなかった責任問題について、同法人はどう考えたのだろうか。それが議論されたかどうかが怪しく思えるほど訴訟に至るまでが短い。同法人は、まず14年3月28日に文書で奨学金返還請求を行い、それに卒業生側が応じないと見るや、同年4月23日に提訴。中学校を卒業したばかりの15歳の少女に、その母校が容赦ない取り立てを行ったように映る。少子化で学校運営が厳しくなっているとはいえ世知辛い話である。

【山下 康太】

 

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