200兆円を超える富を生み出す国内油田!(4)
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公益財団法人リバーフロント研究所 研究参与 竹村 公太郎 氏
発電に利用されていな多くのダムが全国に存在
――前回、現在のダムに「ちょっと手を加えるだけで、現在の水力発電の何倍もの潜在力を簡単に引き出すことができる」方法3つのうち、2つまでお聞きました。3つ目は何ですか。
竹村 3つ目は、現在は発電に使われていないダムに発電させる方法です。日本には発電に利用されていない非常におおくのダムが全国に万遍なく存在しています。大きなものでは、国の直轄の多目的ダムから、都道府県の多目的ダム、そして国や都道府県が管理している砂防ダム(小さな渓流などに設置される土砂災害防止のための設備)まで様々です。ダムは大きければ、発電量が多くなり効率はいいのですが、ダムの高さが10mクラスの砂防ダムでも発電は可能で、100~300kwほどの電力は簡単に得られます。中水力発電の潜在力は思いのほか大きいのです。将来は、砂防ダムや農業用水ダムのように、発電とは別の目的で造られた、日本全国に存在する多数のダムの発電能力を積極的に活用すべきであると考えています。
ダム屋の私の眼には、ダム湖は国産の油田
今、(1)運用変更と(2)嵩上げだけで、343億kwの電力量が増やせると試算しています。これに(3)現在は発電に利用されていないダムを開発(技術的には何ら問題がなく、再生可能エネルギーの固定買取制度のおかげで、経済的にも好条件となっています)して、少なく見積もって1,000億kwを加えると合計で1,350億kwの電力量が増やせる計算になります。これに既存のものを合わせると、約2,200億kwとなり、日本全体の電力需要の約20%を賄うことができます。これだけの純国産電力を安定的に得られる意味はとても大きいと思います。仮に家庭用電力料金では、1,000億kwの増加で、1kw当たりを20円とすると、年間で2兆円になります。100年で200兆円の電力が新たに生まれることになるのです。
ダム屋の私の眼からみれば、ダムに貯められた雨水は石油に等しく、ダム湖は国産の油田のように見えます。しかも、このエネルギー資源は、ダム湖に雨が貯まるほど増え、まるで魔法のように涸れることがありません。
犠牲を強いた人々や自然環境に申し訳が立たない
――時間になりました。今後の進め方と、読者に対してメッセージを頂けますか。
竹村 近代は膨張の時代でした。しかし、これからの時代が求めているのは持続可能な社会です。持続可能というのは、未来永劫でエンドがないことを意味します。膨張の時代に、私は近代文明のシンボルとも言える巨大ダム(川治ダム、大川ダム、宮ケ瀬ダム)に従事してきました。
しかし、巨大ダムには巨大な破壊が伴いました。こうした巨大な破壊と引き換えに、洪水を防ぎ、飲み水を供給し、近代化のエンジンであった電気エネルギーを得て、日本は高度経済成長しました。現在の日本、日本経済は私たちの先人、また巨大ダムに沈んだ集落の多くの人々の犠牲があって成り立っています。だからこそ、この巨大遺産を無駄にすることは許されないのです。有効に使っていかなければ、過去に犠牲を強いた人々、生まれ育った家、学んだ学校、遊んだ小川、恋人と歩いた丘、夫婦で将来を誓った神社やお寺など全てを失った人々や、改変した自然環境に対して申し訳が立ちません。
最終的には国民の熱意が政治家を動かします
私は今回この本を書いてよかったと思っています。それは、多くの読者から反響を頂いたばかりでなく、多くの政治家、行政関係者からもお問い合わせを頂くことができたからです。
水力発電の問題は、国交省(河川の管理)、経済産業省(エネルギー問題)、農水省(土地改良)、環境省(自然環境)、財務省(国有財産処理)、総務省(地方自治)など、多くの省庁が関係します。霞が関を1つ1つ回ることは事実上不可能です。具体的な行動に移していくためには、「河川法の改正」など各省庁の行政を指導する様々な議員立法が必要です。政治家の存在が絶対に必要になってくるのです。読者の皆さんにもお願いがあります。その政治家を選ぶのは、一人ひとりの読者の皆さんです。ぜひ、この構想をご理解頂き、政治家の先生方を、「先生、日本の将来のために頑張れ!」と下支えして欲しいのです。最終的には、読者、国民の熱意が政治家を動かします。
私はこの構想が日本の将来にとって、また日本国民に、直接的に多大な恩恵をもたらすことを確信しています。ただし、「新しくダムを造る」わけではないので、日本のGDPを押し上げ、産業界に大きく貢献する話ではありません。もちろん利権も絡みません。
しかし、自民党から共産党まで、心ある政治家の先生方には、ぜひ党派を超えて、エネルギー政策に一石を投じて頂きたいのです。日本の未来のために頑張って欲しいのです。それは、水力発電は天から日本列島が授かった唯一の純国産エネルギーだからです。――本日はお忙しい中ありがとうございました。日本はよく自然災害列島などと言われます。しかしその反面、水力エネルギー充満列島でもあるわけですね。勉強になりました。
(了)
【金木 亮憲】<プロフィール>
竹村 公太郎(たけむら・こうたろう)
1945年生まれ。1970年、東北大学工学部土木工学科修士課程修了。同年、建設省(国土交通省)入省。以来、主にダム・河川事業を担当し、近畿地方建設局長、河川局長などを歴任。2002年、国土交通省退官後、(公財)リバーフロント研究所代表理事を経て、現在は同研究所 研究参与、(特非)水フォーラム事務局長。著書に、ベストセラー『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫)、『水力発電が日本を救う』(東洋経済新報社)など多数。関連記事
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