2024年12月27日( 金 )

殺人マンション鹿島建設(中)

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 ――久留米市による建築確認における問題点をお聞かせください。

 偽装された構造計算書に基づく建築確認申請に対し審査を行い、確認済証を交付したのは特定行政庁である久留米市です。建築確認制度は、申請された建築計画が法令・規準に合致しているか確認をするものであり、設計に偽装があることなど許されるはずもありません。建築確認を行う建築主事は、一定の審査実務経験を積んだ一級建築士でなければ受験できず、建築主事は、建築に関して高いレベルの知識を有していると、一般的には認識されています。当該マンションの構造計算の偽装のような単純な偽装は、建築主事でなくても、審査担当職員が構造計算書と図面を見比べれば容易に発見できるレベルの内容です。

 また、柱や梁の不適切な配置は、図面を見ただけで疑問を抱くべきレベルであり、地盤調査資料が添付されていないのに、杭先端の深さや杭耐力が適切であるかどうか、構造計算を左右する重要な地盤種別を判断できるはずはありません。地盤種別の件に関して、久留米市の建築指導課長は、「周辺の支持地盤の深さが40m程度だとしても、このマンションの下だけは非常に浅いところに岩盤がある可能性もある」と、区分所有者の神経を逆なでする発言をし、反発を買っていました。

 このような見解を平然と述べる時点で、久留米市の建築主事がその能力を有していないことを自ら証明していることになります。一級建築士のさらに上位の資格とも言われる建築主事が存在する特定行政庁の見解とは思えぬ恥ずかしい主張です。

 そもそも建築物の構造上の安全性を確認する手段は一つしかありません。国土交通大臣が定めた方法に基づいた構造計算プログラムを使用して構造物の安全を確認することに尽きます。よほど特殊な建築物以外にはそれを検証する手段は他にはありません。今回、本件マンションの確認申請書に添付された構造計算に偽装が多々あり、原告が依頼した建築士が検証した結果、耐震強度が必要強度の35%しかないことが判明しました。その際、久留米市の要望に従い確認申請当時のプログラムを使用して計算した構造計算書を提出しています。

 この原告が提出した構造計算書に対して久留米市が行なうべき唯一の作業は、構造計算書の中味を検証することをおいて他にはありません。その検証結果、計算内容について質問や疑問点があればそれを指摘すれば良いことですし、互いに技術者として指摘部分の検証を行なうことにより納得が得られれば良いのです。これは私心の入らぬ工学的な取り組みです。これが最優先されるべき作業であり、確認申請時点での建物の耐震強度を把握する唯一の行為です。

 しかしながら、構造計算書を提出して既に2年半(?)以上もの歳月が経過しているにもかかわらず、久留米市はその構造計算書の検証を一切行なっておらず、今に至ってもその意志が見られません。このような現実ですから原告提出の構造計算書に対して久留米市が反論する内容は、計算書の中味ではなく(検証していないのでそれは出来ないわけですが)、もっぱら構造計算書を作成した人物に対する誹謗中傷の類や、計算書に印字された番号の食い違いにこだわるなど、計算書の中味を外したところに論点をずらすことばかりに終始しているのです。

 特定行政庁であれば、確認申請書に添付された構造計算書の中味を検証して、それが適法なものであるか否かを判断する仕事を日常の業務としているわけですから、構造計算書を担当者が一日集中して検証すれば容易にその中味の可否は判断されるものです。それにもかかわらず本件マンションの構造計算書の検証がいまだに実現できていない理由はただ一つ、計算書を検証する能力を久留米市が持ちあわせていないことに尽きます。

 本件マンションの建築確認申請が行なわれた当時、確認申請を提出する建築士事務所の間では「久留米市には構造計算書を検証する能力がない」という共通認識がありました。問われる内容は大概杭基礎の荷重についてのことのみであり、柱や梁の構造内容について指摘を受けることはありませんでした。つまり久留米市は構造計算書をまともに検証できる担当者が不在の特定行政庁だったのです。このことは、当時の建築担当者は言うに及ばず、おそらく現在の建築審査担当者も、私たちが指摘するまでもなく内心では自分たちの能力不足が分かっているはずです。そのような行政機関が現在でも確認申請業務を遂行していることに大いなる疑問点を感じます。

 ちなみに、現在の久留米市の構造審査担当者である上野氏に、「あなたが、このマンション(新生マンション花畑西)の審査をするとした場合、建築確認を通ると思いますか」と質問したところ、「通りません」という回答でした。

 久留米市が、何故、計算書の中味の検証を行なおうとせず、的を外した論法をくり返し述べるばかりで、自分たちが安易に確認申請を交付したことに対する責任逃れに徹しようとしているのかという疑問の答えはここにあるのです。久留米市は、マンション及び近隣住民の生命・財産は、どうでもよく、自分たちの責任さえ免れればいいと考えているのです。

 本件マンションの耐震構造の実態を検証するためには、原告が提出した構造計算書を詳細に検証すれば足りることであり、またそれ以外の論議をしても、それは枝葉末節のことで、そこからは 15階建てSRC構造建物の耐震強度の実態を知ることはできないのです。提出された構造計算書が建物の耐震強度を検証する唯一のものなのです。

 本件マンションの確認申請時に、構造計算書や図面の偽装を指摘する能力を備えた担当者が久留米市に居たとするならば、少なくとも耐震強度35%という危険なマンションの建設はその時点でくい止めることができたはずです。今となっては久留米市が行なった安易な確認交付は、本件マンションの購入者にとっては罪深い行為であったといわざるを得ません。

 本件マンションの建築確認において久留米市の建築主事は、これらの法令違反をノーチェックで建築確認済証を交付したのであり、これは、建築基準法第6条に違反する行為です。
 本件マンションの建築確認当時の建築基準法第6条

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 しかし、上記のように数多くの法令に違反している建築計画を認め、違反だらけの建物を建設させた久留米市の行政上の責任は非常に重いと言えます。久留米市のように、無能で無責任な建築確認を行いながら、指摘されても責任を取らず、他者に責任転嫁するような行政であれば、建築確認制度自体に価値がなく、いっそのこと、建築確認ではなく、届出制とした方が良いのではないかと思います。
このマンション以外にも、久留米市が建築確認を行った建物に関する情報が、久留米市民から寄せられています。今後、久留米市の建築確認行政の「ずさんさ」、「無能さ」、「無責任さ」を、徹底的に暴いていく所存です。

(つづく)

 
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