初の女性大統領の誕生か?ヒラリー・クリントン:仮面の女王(4)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
日本とすれば誰が次期アメリカ大統領になるにせよ、アメリカの国力の低下と国際政治における指導力の喪失を前提に対米関係を冷静に再構築する必要がある。その意味でアメリカの国民や企業にとって真に頼りになるパートナーは日本であることを認識させる努力が今ほど必要とされている時はない。
例えば、オバマ大統領が進めてきた「緑のニューディール政策」にとって欠かせない環境技術に関しては水浄化や太陽光発電など日本が世界をリードしているものが圧倒的に多い。こうした技術力を軸に日米連携プレーを深め、中国の環境問題を解決に導く方向を目指すのも新機軸であろう。
最近の世界情勢を見ると、アメリカにとっても日本にとっても、「中国、ロシア、IS(イスラム国)、北朝鮮」が4大脅威としてクローズアップされる傾向にある。中国による南シナ海での岩礁の埋め立てや軍事基地化はこうした懸念に拍車をかけている。こうした状況下、アメリカがどのような外交、安全保障政策を展開するのか。
2015年の夏、日本で大きな話題となった安保法制の議論も、中国の脅威を巡る論争の結果、アメリカとの共同作戦が欠かせないとの結論に至ったわけである。日本はアメリカから大量かつ高額の兵器の購入を決めた。実は、日本以上に中国との関係強化を目指しているのが、アメリカに他ならないのである。中国とアメリカが互いに最大の通商貿易相手国となって久しい。
マイクロソフトやゼネラル・エレクトリックなどアメリカ企業は中国沿岸部において「スマートシティ構想」を強力に推し進めている。北京郊外の新首都建設計画においてもアメリカ企業の参入が際立つ。加えて、教育面の交流においては、中国からアメリカへの国費留学生数は1万人を超える勢いで、学術面において米中の交流は拡大の一途を遂げている。
要は、日本以上にアメリカは中国との経済、学術面で依存関係を深めているということだ。その背景には、「100人委員会」に代表されるように、アメリカで米国籍を取得し、政治、経済、文化の各分野で活躍する中国系アメリカ人の存在がある。
とはいえ、その一方で、このところ日米を問わず「中国脅威論」が幅を利かせるようになった。特に日本政府は、2014年から2015年にかけて、集団自衛権行使、安全保障法制などの改正論争の過程で、「中国脅威論」を利用して危機感を煽るという動きを顕在化させた。
うがった見方をすれば、アメリカは財政危機という深刻な国家的危機に直面しており、国防予算の削減が緊急性を帯びているため、中国脅威論を煽ることで、高額だが信頼性の疑わしい軍事関係技術を日本やベトナムに売込み攻勢をかけているようにも思われる。実戦での命中率が2%しかないパトリオット・ミサイルや操縦の難しさで多くの事故も報告されるステルス戦闘機F35など、その典型といえよう。
アメリカは長年にわたって「世界の警察官」を自認してきたが、解決策の見えない国内問題から目を背けさせるためにも「アジアへのリバランス」という政策を掲げ、アジア太平洋地域を重視する姿勢を内外に示しているに過ぎないのではないか。しかもアメリカは「世界の警察官」としての影響力を残したいため、お人好しの日本に財政的負担を被せようとする本音が見え隠れするのである。
オバマもヒラリーも日本に対しては微笑外交を絶やさないできた。しかし、2人とも実に強かな「アメリカ至上主義者」であると同時に、「金銭至上主義者」でもあることを見逃してはならない。そうした個人的野心を秘めた上で、政治や外交にしのぎを削っているわけだ。マネーの魔力を理解せずして、超大国アメリカの行く末を見通すことはできないだろう。オバマもヒラリーもマネーという呪縛に囚われているからだ。トランプの登場も“マネー劇場”の名わき役といったところである。そうした視点からアメリカの大統領選挙を分析すれば、タイタニック化しつつあるアメリカの行方が自ずと明らかになるはずだ。アメリカの世紀は今回の大統領選挙で終焉を迎えたのである。(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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