福岡県議会議長辞職勧告決議案の採決中止を求める動議に賛成した議員

福岡県議会
福岡県議会

    福岡県議会が17日に開いた臨時会において、高額な海外視察、金銭授受疑惑、熊本地震後の発言などに関する蔵内勇夫議長に対する議長職の辞職勧告決議案の採決が中止となった。一部報道は採決中止を「見送り」と表現しているが、見送りは計画や判断を先延ばしにするという意味で、今回の場合、「中止ではないか」(県政与党会派の中堅県議)との見方が示された。

副議長選の演説会は非公開で実施

 臨時会において、前任者の議員辞職にともなう副議長選や日弁連(日本弁護士連合会)の指針に基づく第三者委員会の設置が議題になっていたが、14日に議長職を得るにあたり金銭を自民党県議団幹部に支払ったことを証言した吉松源昭県議が、蔵内勇夫議長に対する議長職の辞職勧告決議案を提出したことで、にわかに政局となった。

 同日は、盆休みで各議員はお墓参りや支援者宅へのあいさつ回りなどを行う時期。直接、金銭授受と関係していない県議も地元で批判を浴びており、その中心とされる蔵内勇夫議長に対する議長職辞職勧告決議案は、事実上、各議員の踏み絵となる。各会派・各議員は、上を下への大騒ぎとなった。

 臨時会では副議長の選出も予定されたが、自民党県議団・公明党・民主県政県議団・新政会の交渉会派は、従来のような根回しによる候補者擁立ではなく、会派ごとに話し合い、しかるべき候補者を立てることとなった。

 問題は周知期間の短さである。自民は、会派総会で選挙を行い、候補者を決めることとなったが、民主や新政会は、有志による「副議長選挙における所信表明会の開催について」との案内を作成し、民主会派が主導するかたちで、各議員やメディアに案内が送られた。そのなかに当社は入っていなかった。

 16日になってある関係者から「マスコミは所信表明会に入れないようだ」「御社には案内は来ていないのでは」と報道関係者あての文書が送られてきた。

一部マスコミに送られた副議長選挙における所信表明会の実施について(文書)
一部マスコミに送られた
副議長選挙における所信表明会の実施について(文書)

 そこで、同日、副議長選への立候補表明を新政会の椛島徳博会長が行うとのことで取材に行き、記者会見の中で「マスコミを入れないのは改革に逆行するのでは」と質問を行った。椛島氏は事情を知らないとのことで、有志の1人・中村香月県議が椛島氏に代わり回答し、「正副議長選の演説会などが条例に定めがないため有志で、議員に対する説明会を行うことになった」と釈明したうえで「会派の中に議員総会を予定している会派もあり、参加・不参加による報道の不公平さが生じないよう報道機関を入れないとなった」「うち(新政会)が主体ではない」と語った。

 中村県議は「うちが主体ではない」と述べ、民主会派主導での動きであったことを示唆していた。椛島氏の会見は、政治系ユーチューバー「選挙タイムズ」がライブ配信しており、多くの視聴者が「おかしい」「なぜ非公開?」などのコメントをしていた。

 配信を見ていたある県議は、「報道を入れないのは、自民党への配慮」と語ったが、会見後に中村氏より「所信表明会の冒頭、マスコミも入れるようになった」と連絡があった。事務方として事の経緯を説明していただいた中村県議の努力を評価する一方で、民主会派の在り方に大いに疑問がわいた。いまだにこの件について民主会派から説明はない。民主と名はついているが、本当に民主的なのか疑問だ。

動議で決議案審議が中止に

 17日の臨時会は、開会予定時刻(午前11時)を大幅に超えて、午後3時50分過ぎから始まった。福岡以外の報道機関も駆けつけ、読売テレビの「ミヤネ屋」は生中継を行った。傍聴者には整理券と引換券が準備され、キャンセル待ちが出たほどであった。

 多くの県民・国民が関心を寄せている福岡県議会の問題、その中心にいる蔵内議長の辞職勧告決議案の行方を、固唾をのんで見守ったが、既報の通り、自民党県議団の林泰輔県議より大声で「動議!」と中止動議が出された。採決は起立方式で行われ、自民党県議団の大半に加え、民主県政県議団の一部、無所属の会が動議に賛成し、起立した。思わぬ事態に、傍聴者からは怒りの声が上がった。

 議会後に自民党県議団の渡辺勝将会長は、記者団に対し党議拘束をかけたことを認め、会派の分裂を防ぐためだったとした。実は、自民会派の2期生8人が、決議案に賛成し、井上正文県議が賛成討論を行うと議会運営委員会(議運)で報告されていた。ところが、その後再度開かれた議運で、井上氏は質問を取り下げた。

 井上氏は「蔵内議長が自身の進退について表明すると聞いたので、取り下げる手続きを取った」としたが、全国議長会の会長も務める蔵内氏の決議案に自民からも賛成が出ると、福岡だけの話に終わらず全国に波及しかねない。そこで禁じ手だが、動議による差し止めを行ったのであろう。

 ある会派の県議は「議会事務局に相当調べさせたのではないか」「まさかこういう(決議案審議の中止)動議が出されるとは想像しなかった」と述べ、「対抗して中止動議に対する動議で阻止すべきだった」と悔やんだ。

 実は質問や討論の取り下げは今回が初めてではない。かつて、自民党県議団に所属した複数の元県議が同じような経験をしていたという。考え方に幅がある自民党は、党や会派の方針と議員の考えが一致しない場合、妥協策を提示して取り下げさせるのが常套手段である。

理解しがたい民主会派の対応

 自民が組織防衛上、決議案の審議を妨害するのは想定された。前日当たりから聞こえてきた動議や開会の引き延ばしなどはあり得る話だと思っていたが、民主県政県議団の10人が賛成したのは理解しがたい。顔ぶれを見ると旧社会党系の県議が多いが、支持団体の意向もそうであるとしたら、改革などできようはずもない。会長の原中氏自身も賛成しており、ある会合で行った県議会の改革に関する発言の信ぴょう性が問われる。

 民主元職の重鎮に配慮しているとの見方も囁かれ、水面下で駆け引きが行われたともいう。いずれにせよブラックボックスで、県民・国民はもやもやした思いを抱いた人が多いはずだ。政治の世界の理屈は理解できるが、正々堂々と論議して、賛否を決するのが議会制民主主義ではないだろうか。

 吉松氏の動きの背後に政治的なものを指摘する声もあるが、仮にそうしたものがあるにせよ、福岡県議会の不明朗な問題を是正することに〇〇党も〇〇派もないはずだ。

 今回のことで蔵内氏の県南地域への貢献やワンヘルス事業を評価する人々からも、疑問の声が上がっている。

 福岡県民のことより、面子や立場、利害関係を重視するような県議は、次の選挙でふるいにかけ落とす必要がある。

 今回の決議案審議の中止動議に賛成した議員と所属会派名を次の通り公開する。

<自民党県議団>
佐藤楓(さとう かえで)
宮川宗一郎(みやがわ そういちろう)
波多江祐介(はたえ ゆうすけ)
小緑貴吏(こみどり たかし)
横尾政則(よこお まさのり)
林泰輔(はやし たいすけ)
宮原伸一(みやはら しんいち)
花田尚彦(はなだ なおひこ)
高橋義彦(たかはし よしひこ)
永川俊彦(えがわ としひこ)
笠和彦(りゅう かずひこ)
吉田健一朗(よしだ けんいちろう)
井上正文(いのうえ まさふみ)
大田満(おおた みつる)
吉田浩一(よしだ こういち)
江頭祥一(えがしら しょういち)
渡辺勝将(わたなべ かつまさ) 
浦伊三夫(うら いさお)
井上博行(いのうえ ひろゆき) 
江口善明(えぐち よしあき)
神崎聡(こうざき さとし)
川端耕一(かわばた こういち)
香原勝司(こうはら かつじ)
桐明和久(きりあけ かずひさ)
中牟田伸二(なかむた しんじ)
野原隆士(のはら たかし)
大島道人(おおしま みちひと)
秋田章二(あきた しょうじ)
井上順吾(いのうえ じゅんご)
樋口明(ひぐち あきら)
長裕海(ちょう ひろうみ)
松尾統章(まつお とうしょう)
松本國寛(まつもと くにひろ)
原口剣生(はらぐち けんせい)
加地邦雄(かぢ くにお)
井上忠敏(いのうえ ただとし)
今林久(いまはやし きゅう)
※蔵内議長と板橋副議長は採決に加わっていない。

<民主県政県議団>
吉岡玲子(よしおか れいこ)
亀崎大介(かめざき だいすけ)
坪田晋(つぼた すすむ)
田中雅臣(たなか まさおみ)
豊福るみ子(とよふく るみこ)
山本耕一(やまもと こういち)
井上博隆(いのうえ ひろたか)
原中誠志(はらなか まさし)    
原竹岩海(はらたけ いわみ)
佐々木徹(ささき とおる)

<無所属の会>
新開嵩将(しんかい たかまさ)
新開崇司(しんかい たかし)

【近藤将勝】

関連記事