トランプ新大統領の「暴言」は本音なのか
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共和党・トランプ候補が米大統領選で勝利を収めたニュースは、アメリカのみならず世界各国に衝撃を与えた。日本の安倍首相、韓国の朴槿恵大統領、イギリスのメイ首相らが次々に祝意を表したが、ある特定の傾向を持つ政治家たちからも歓呼の声が上がっている。
フランスの極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首。強硬な移民排斥政策を続けるハンガリーのオルバン・ビクトル首相。過激な民族主義を掲げるロシア・自由民主党のウラジミール・ジリノフスキー党首。極右・民族主義を掲げる政治家たちが、こぞってトランプ新大統領の誕生を歓迎している。
今回の米大統領選を振り返ると、トランプ候補が最初に注目を集めたのが「メキシコとの国境に壁を作り、不法移民を排斥する」という発言だった。当初は泡沫候補のホラ吹きという扱いだったが、いざ共和党候補の座に着くと、このような発言にもそれなりの重みが出てくる。ついに次期大統領となった今では、メキシコのルイスマシュー外相が「壁」の費用負担について「そのような提案については、検討すらしていない」とわざわざ言明する必要が生まれてしまった。
「すべてのイスラム教徒を入国させるな」「強姦魔と殺人者を送り込んでくるメキシコを締め出せ」「日本は自力で国を守れ。核兵器を持つのもいいだろう」……トランプ新大統領の「暴言」がすべて現実のものになったとしたら、世界は大混乱に陥ることは間違いない。先に挙げた極右政治家たちが求めるのは、その混乱だろう。
しかしトランプ新大統領は、就任直後の演説で「わたしはすべてのアメリカ人の大統領になる」と宣言した。もしトランプがこれまで通りの暴言を貫くのなら、「すべての貧しいアメリカ人の大統領になる」とでも言ったのではあるまいか。そして「スラムを立て直し、インフラを再建する。そして多くの雇用を生み出す」とも語った。「肥え太ったエスタブリッシュメントから富を剥ぎ取る」ではなかったのだ。演説の多くは共に選挙を戦った家族や共和党関係者への感謝に割かれたが、その次に時間を取ったのは経済問題であった。
もちろん、この演説だけでトランプ新大統領のすべてを推し量るのは早計にすぎる。しかし、大統領となったトランプ氏を、これまで自ら演じてきたような単純なレイシスト、ポピュリストと断じるのもまた早すぎるのではないだろうか。
【深水 央】
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