米国とイスラエルによるイラン攻撃 第3次世界大戦の幕開け?(前)

国際未来科学研究所
代表 浜田和幸 氏

 世界が衝撃に襲われています。トランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相によるイランへの電撃攻撃が引き金です。去る2月28日、土曜日の早朝のこと。この攻撃によって、イランの最高指導者ハメネイ師(86歳)が自宅で死亡。ハメネイ師をはじめ家族やシャムハーニ少将とイラン革命防衛隊司令官パクプール少将という2人を含む政権幹部もイスラエル軍の戦闘機が投下した30発の爆弾によって、瞬時にあの世に送られた模様です。

報復の連鎖と
政権交代論の現実性

 イラン側は今回のアメリカとイスラエルの攻撃に対して早速、反撃に出ました。周辺国にある27の米軍基地への攻撃に加え、テヘランの自爆ドローンがドバイの有名なパーム・ジュメイラ、ドバイ国際空港、そしてバーレーンの高層住宅街を攻撃しました。

 さて、米国防総省安全保障政策アナリストのマルーフ氏は、米国とイスラエルによるイラン攻撃は政権交代を引き起こす可能性は低いと分析しています。マルーフ氏曰く「トランプ大統領がテヘランとの交渉は継続中であると公言していたが、カムフラージュだろう。攻撃のタイミングはイスラエルのネタニヤフ首相が2月12日にマール・アー・ラーゴを訪問した際に決定された可能性が高い」。

 「米国は常にイスラエルの言いなりになっている。ネタニヤフ首相は事実上トランプ大統領をコントロールしている」とマルーフ氏は主張し、トランプ大統領はイスラエル首相の「アラブ諸国全体を包含する大イスラエル」というビジョンを事実上実現させようとしていると付け加えています。

 トランプ大統領はイラン攻撃で「アメリカ国民を守る」と主張し、「テヘランの政権交代を強制する」という目標を公然と宣言しましたが、イラン政府を転覆させる試みは大きな障害に直面するだろうというのがマルーフ氏の見立てです。

 アフガニスタンでの事例を思い越すまでもなく、他国の政権交代を軍事力で達成するのは至難のワザと思われます。ことにイランではなおさらでしょう。なぜなら、彼らは非常に確固とした体制を敷いているからです。最高指導者ハメネイ師が殺害されたわけですが、イスラム革命防衛隊はイランを「結束力のある国民国家」として機能させ続けるため、宗教的手段を含め、あらゆる手段を講じる姿勢を強めています。

 トランプ大統領は今回の攻撃を、イランの核・ミサイル開発計画にとどまらない、より広範な戦略的対立の一環だと説明し、BRICS諸国や中国の「一帯一路」構想を公然と批判しています。まさに「賽は投げられた」といっても過言ではありません。アメリカはイスラエルに加担し、イランへの挑発行為を仕掛け、その軍事力を破壊し、政権交代をもたらそうとしているようですが、そうは簡単に行かないでしょう。

拡大戦争の危機と
アメリカの論理破綻

 それどころか、非常に悪い結果を招く可能性があります。なぜなら、イスラエルがイランの反撃から自国を「防衛」する必要があると判断すれば、容易に近隣諸国にエスカレートし、核戦争へと発展する可能性があるからです。米海軍の艦艇もイランのミサイル攻撃の脅威に晒される可能性があります。

 トランプ氏は土曜日の早朝、自身の「真実の社会プラットフォーム」を通じて、「我々は彼らのミサイルを破壊し、ミサイル産業を根こそぎ壊滅させる」と強調。また、「我々は彼らの海軍を壊滅させる」とも宣言。ミサイル破壊を最優先としたのは、明らかにイスラエルの意向に沿ったもの。というのは、イスラエルはイランのミサイルを自国にとって最大の脅威と見なしているからです。

 と同時に、トランプ氏はイラン国民に対し、立ち上がって政府を転覆させるよう呼びかけました。そのうえで、イランとの戦闘でアメリカ人が命を落とすことを認め、「勇敢なアメリカの英雄たちの命が失われるかもしれない」と付け加えています。彼曰く「戦争ではよくあることだ」。自身は兵役逃れに奔走したことなど忘却の彼方に追いやっているようです。

 実は、トランプ氏の一族全員が兵役を回避しています。そんな自己中のトランプ一家ですが、他のアメリカ人家庭の息子や娘を砲弾の餌食として利用し、戦争行為の代償を払うのは当然だと主張しているわけで、早晩、アメリカの国民も愛想を尽かすのではないでしょうか。

 ウクライナとガザでの戦争を助長しつつ、最近ではベネズエラを、そして今度はキューバを脅迫することに奔走していますが、これでは世界はますます対立と紛争への道を突き進むとしか思えません。

 米国にとっても、制裁に長年苦しんできたイランの人々にとっても戦争による平和は絵に描いた餅に過ぎません。トランプ大統領が主張する戦争行為の根拠は、イランが核兵器を開発し、米国を攻撃可能な弾道ミサイルを保有しているという推定の域を出ていないのです。そもそも、前回のイラン攻撃で、そうした核開発施設はすべて破壊したと大見えを切っていたはず。

 また、こうした言動は2002年から03年にかけて、イラクが「大量破壊兵器」を開発しており、それがアメリカ上空に「キノコ雲」をもたらす可能性があると、当時のライス国務長官が嘘をついた事例を彷彿とさせます。

 イラク戦争では50万人のイラク人と4,431人のアメリカ人が死亡しました。イランの政権交代といった輝かしい目標を掲げている今、どれほどの犠牲が余儀なくされるというのでしょうか。イランでどのような惨事が起こるかという問題を超えて、長期的なリスクは、アメリカの大統領が「自分が望むことは何でもできる」と公言し、世界中のどこであれ罰を受けることなく行動できると信じていることです。

(つづく)


浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。

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