西部ガスHD研究(11)成長のカギ握る「ひびきLNG基地」

九州電力も出資

 ひびきエル・エヌ・ジー(株)は「ひびきLNG基地」の操業会社として、北九州市の響灘エリアにおいてLNG(液化天然ガス)の受入、貯蔵、気化、加工、供給などを行っている企業だ。2010年4月に設立され、基地は14年11月に竣工、操業を開始している。資本金は60億円で、西部ガスホールディングス(株)が90%、九州電力(株)が10%を出資している。

 基地は敷地面積約32万6,000m2で、世界最大級のLNGタンカーが入港できる桟橋を備えるなど、九州北部におけるエネルギーのハブとなることが期待されている。現在2基のタンクがある。総事業費約500億円をかけ、29年の運用を目指し、3基目のタンクの建設を進めている。直近5期の業績は【表】の通りだ。

表

 3基全体の総事業費は1,100億円を超える。西部ガスHDがこのように多額の投資を行うのは、LNGは「(都市)ガス事業」の根幹であるためであり、かつ成長事業と位置づける「電力・その他エネルギー(以下、電力)事業」の原材料でもあるためでもある。

 とくに電力事業は現状、卸電力取引所などから電力を調達しており、その調達コストが収益を圧迫するため、薄利な状況になりやすい。そこで自前の電力を調達できるよう、ひびきLNG基地に隣接する敷地において西部ガスグループ初のLNG火力発電所を建設。基地からLNGの供給を受け、まもなく稼働を始める模様だ。

 ひびき発電合同会社が運営するもので、九州電力と共同で22年4月に設立された。電力の自前供給はもちろん、きめ細かな料金プラン設定が可能になるなど、収益性の向上が期待される。さらに、発電用と都市ガス用のLNGをまとめて大量発注することなどでコスト低減も見込まれる。

JERAとも戦略的提携

 このほか、近年のトピックスとして、25年4月、発電大手の(株)JERAとLNG基地の戦略的活用などに関する提携を締結。JERAはひびきLNG基地の3号タンクを活用し、再生可能エネルギーの大量導入や季節間電力需要格差により増大する電力需給の変動などへの対応力の向上を図る。

 西部ガスHDは、3号タンク増設に伴う需要と供給の安定化や、LNGの相互融通が可能になることで、基地の安定的な事業運営と収益の確保が図れるというメリットがある。また、両社が協力して東南アジアなどでのLNG販売に乗り出すなど、海外展開による収益増も期待している。

 以上のように、ひびきLNG基地は、西部ガスグループの都市ガス事業、電力事業の両輪を支える中核インフラとして期待されている。3基体制の完成により、九州北部のエネルギー供給の安定化に寄与するだろう。

 一方で、多額の投資を行い、かつ電気事業でライバルでもある九州電力などとの共同で取り組まざるをえないほど、原材料調達や環境配慮などの重要性が高まっており、このことが西部ガスHDが電力を含むエネルギー事業への「原点回帰」を進める背景となっているといえそうだ。

 ウクライナ戦争や、アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃に伴う地政学的リスクも高まっている。西部ガスHDはLNGの調達をオーストラリアやマレーシアを中心に行っているが、これらの紛争はそれら地域からの調達価格に影響を与える可能性がある。そうした視点からも、ひびきLNG基地に絡む事業の先行きが注目される。

【特別取材班】

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