再生エネルギー普及伸び悩む、新電力は特徴で勝負せよ!(前)
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今年4月、日本の電力市場は完全に開放された。これによって、各地域の電力会社のみが行ってきた電力供給に、さまざまな企業が取り組むことができるようになった。電力市場の開放、新電力の挑戦。ドラスティックに変わろうとしている電力市場について、再生可能エネルギーの普及鈍化と新電力の挑戦という2つの側面からレポートする。
原発事故が世論の後押しに
近年の電力に関する大きな流れは2つある。1つは再生可能エネルギーの普及鈍化、もう1つは新電力参入による電力供給の仕組みの変化である。
なぜ今、再生可能エネルギーの普及が鈍っているのか、とくに太陽光発電関連事業が伸び悩んでいるのか。
今年になって太陽光発電関連事業の倒産が相次いでいる。この事業のすそ野は広い。パネルメーカー、架台業者、設置・施工業者、販売業者。2011年の東日本大震災以来、太陽光発電関連事業は一気に伸長した。爆発的といってもいい状態だった。これはソフトバンクの孫正義氏らが先頭に立ち、かつてない高値での固定価格買取制度が実現したためだ。資産の有効な活用方法として普及していくことになる。きっかけは東日本大震災によって引き起こされた福島第一原発の炉心溶融事故。国民は原発の危険性を認識し、それに代わるエネルギー源を求めた。原発の再稼働が続いている今となっては昔の物語のようだが、そのときは確実に世論の後押しもあったのである。固定価格の下落、そして…
そして12年に10kW未満は42円/kWhで10年固定、10kW以上は40円+税/kWhで20年固定という買取価格が導入されたのである。事業者、家計の両方から優良な投資先として認められ、メガソーラーから戸建てまで大小さまざまなかたちで太陽光発電が行われるようになった。遊んでいる金はすべて太陽光発電に投資せよ、というような勢いだったことは記憶に新しい。金融機関も信用に足る企業の太陽光発電投資に関しては積極的に融資していた。
その後、買取価格は年々下落。10kW以上を見ていくと、翌13年には36円/kWh、14年には32円/kWh、15年にはついに30円を割り込み29円/kWhとなった。16年は24円/kWhにまで落ち込んでしまった。この下落が魅力を損ねていった原因であることは想像に難くない。政府はパネルの市場価格を調査したうえで年々減少させた、というが、この下落は太陽光発電事業の拡大を防ぐ「ストッパー」として価格設定したと言われても仕方のないレベルである。太陽光関連事業の衰退の原因の1つは、投資先としての魅力の減退にある。他には逆潮流の問題もある。これが物議をかもしたのは14年9月。発端は九州電力の発表だ。
不気味な資料が出回った。タイトルは「九州本土の再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答留保について」。要は太陽光発電への申込みが多すぎるため、そのすべてが系統に接続されると電力がオーバーフローを起こしてしまい、場合によっては安定供給に支障をきたす、つまり停電を引き起こす可能性がある、というものだ。そのため、九州電力は9月以降の接続に関する回答を留保する、という決定を下したのである。
接続に関する回答の留保、というのは、接続できるかどうかわからないからしばらく待て、というものだ。これも事業者たちにとっては大きな足かせとなった。後にこの留保は解除されるが、その条件として出力制御という聞きなれない言葉が追加されることとなる。出力制御とは、大量に電気が供給されたときに接続を切るか、貯めるかしなくてはならない、というものだ。
九州電力では現在、10kW以上の発電能力がある発電施設に対し、接続可能量を超過した場合は、無制限に無補償で出力制御を行う、としている。つまり、「電気がオーバーフローしてしまった場合は、否応なしに売電量を減らしますよ、いいですね」ということである。このルールが第2のストッパーとして働いた。(つづく)
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