2024年12月23日( 月 )

広葉樹の植栽で森林を再生(1)

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多良木町森林組合 代表理事組合長
味岡グループ 代表
味岡 和國 氏

 林野庁のデータによると、日本の国土の約3分の2にあたる約2,508万haが森林である。そのうち天然林などが約59%を占め、残りの約41%を人工林が占めており、そうした森林と連動する産業が林業である。同庁によると、我が国の林業は1980年の産出額1兆1,582億円をピークに年々減少傾向にあり、直近の2014年のデータでは4,515億円まで下がっている。そうした林業の衰退の一方で、近年は甚大な自然災害の発生により、土砂崩れなど森林が関わる被害が続出している。今回は、熊本県球磨郡の多良木町森林組合の取り組み事例を紹介し、今後の森林・林業について考察していく。

苦戦する林業の経営

 冒頭に記したように、林野庁のデータからは林業産出額が年々減少傾向にあることがわかる。その理由は、木材生産の大幅減少。2014年の林業産出額は約4,515億円だが、そのうちの約48%を栽培きのこ類生産が占めており、木材生産は約52%と全体の半分程度。林業産出額のピークとなる1980年には、そのうちの木材生産の占める割合が84%であったことから比較すると、いかに木材生産が減少しているかがわかる。その大きな理由として挙げられるのが木材需要の低迷であり、それに関連して木材価格の下落、さらには労働人材の激減、労働賃金の高騰などがある。

 一方で、森林資源は人工林を中心に毎年1億m3増加しており、現況では約49億m3となっている。同様に、木材生産量も02年から増加しており、14年時点で1,991m2。地域別では、1位:東北(493m3)、2位:九州(467m3)、3位:北海道(329m3)となっており、九州の割合が大きい。高齢級の森林が増えており、資源として本格的な利用可能な状況である。だが、生産量が増える半面で林業産出額が減少していることから、価格が大幅に下落していることがわかる。九州地方のある林業関係者は、「単価が下落し、ほとんど儲けはない。場合によっては、出荷するほど赤字になるときもある」と嘆く。林業の経営は、どこも苦戦しているのが現状だ。

20161130_004 日本の森林面積約2,508haのうち、約58%の1,449haが私有林で、約42%の1,059haが国公有林だ。森林の所有属性は、所有面積10ha未満が林業経営者の約90%を占め、大多数が小規模・零細業者である。

 その林業経営者をサポートする役目を担っているのが、森林組合である。全国で640余の森林組合が活動しており、市町村・郡の森林組合と都道府県の都道府県森林組合連合会(県森連)、全国森林組合連合会(全森連)で、3段階の系統組織が構成されている。森林組合は、組合員の出資により設立され、組合員より選出された役員が総会の決定に基づいて運営にあたる。全国で約155万人の組合員で構成されている。

 森林組合は、森林の管理や木材販売を林業経営者と協同で行う。また、協同化のメリットを最大限に発揮するよう、組合員の経営相談や森林管理、森林施業の受託、資材の共同購入、林産物の共同販売、資金の融資などの事業を実施する。近年は、林産物の高付加価値化や地域の就労の場の拡大を図るため、地域条件に応じて製材加工や住宅建築、しいたけの生産・販売、きのこ・山菜などの特用林産物の加工、森林レクリエーション事業などに取り組む森林組合・県森連も増加し、より消費者ニーズに接近した事業展開が進められている。

 しかし、これらの事業展開には組合ごとに濃淡があり、組合員のニーズのすべてに応えているとは言い難い。16年7月に破綻した公益財団法人山梨県林業公社(負債総額260億4,400万円)など、森林・林業関連の企業・団体の破綻がここ数年で顕在化してきている。

(つづく)

 
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