2024年11月22日( 金 )

広葉樹の植栽で森林を再生(4)

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多良木町森林組合 代表理事組合長
味岡グループ 代表
味岡 和國 氏

公共的な取り組みが必要

味岡 和國 氏<

味岡 和國 氏

 多良木町森林組合の広葉樹への取り組みは、ある種、画期的な事象である。実際に、広葉樹を植えている山の麓を訪れた。樹木はきれいに伐採されており、そこに広葉樹が植えられているという。100年先にようやく出現するのである。味岡組合長はこれからの日本の森林を再生し、環境を変えることで自然災害の発生を防ぎ、生態系を改善することを目指している。また、日本の人工林のうち約44%がスギである。これらスギの人工林から発生するスギ花粉による花粉症に罹患している方々の減少にも、貢献できるだろう。

 総理府のデータでは、「国民が森林に期待する働きは、1位:災害防止、2位:温暖化防止、3位:水資源の涵養」となっている。木材の生産・供給より、環境保全や災害防止への貢献が求められていることは事実である。

 一方で、針葉樹をすべてなくすことは現実的に困難だ。なぜなら、地球上に人間が住む限り、増減はあるにせよ住宅需要がゼロになることはない。木材を一切使わない住宅がすべてになればそれも考えられるが、現状は考えられない。そのため、人間生活のなかで木材は必要だ。生活における生産物としての森林の役目も重要なのだ。

 林野庁は、『森林資源の充実と公益的機能の発揮を図り、循環的に森林を利用していくため、森林の現況、自然条件、地域のニーズ等を踏まえ、将来の望ましい森林の姿を目指し整備・保全を進める必要。とくに人工林は、資源の適切な利用と間伐・再造林等を行うとともに、立地条件に応じて複層林化・長伐期化等を推進するなど、多様で健全な森林への誘導も必要。その際、その土地固有の様々な生育段階や樹種から構成される森林がバランス良く配置される―天然成林、広葉樹と針葉樹が混ざった針広混交林の育成複層林、樹齢・樹高が単一の森林として人為により成立・維持される育成単層林により森林が形成されること』を掲げている。

 日本の森林・林業は、今後、どのような道に進むべきか―。広葉樹の植栽を推進するためには、国や自治体との協業が必要である。『保安林』や『治山事業』としての観点から、公共事業としての色合いを高めて、予算編成を遂行し、国や自治体が保有する森林へ段階的に植栽を実施していくことが、現実的であろう。

 経済としての森林・林業を推進していくには、周辺環境の整備が必要になるだろう。これも国と自治体が、予算を含めた物心の協力が必要である。まずは、意欲のある者が、複数の所有者の森林をとりまとめ、施業を一括して実施する『施業の集約化』を推進することが求められる。また、地域の条件に応じた低コスト・高効率な作業システム―「路網(林道や林業専用道、森林作業道)の整備」、「高性能林業機械の導入」などの合理的な組み合わせにより、生産性の向上などが挙げられる。さらにドイツでは、国の役人である森林官による森林のマネジメントが行われているという。それは、一定の面積ごとに森林官が配置され、ITシステムにより1本ごとの木のコンディションのデータを入力。その情報をもとに、製材会社などの企業と随時入札や取引を実施するという。日本では、森林組合のスタッフがその役目を担い、生産者とユーザーの仲介者として市場をマネジメントする事業展開が実現すれば、さらに林業や木材業界は活性化されるであろう。

 世界でも有数の森林資源を持つ日本。環境保全と経済活動の両面から活性化させるチャンスは、今たしかにある。

(了)

 
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