「領袖」となった習近平主席の次の一手!(1)
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(株)アジア通信社 代表取締役社長 徐 静波 氏
昨年11月、アメリカの次期大統領にドナルド・トランプが決定して、世界に大きな衝撃が走った。今年のヨーロッパでは、イギリスが抜けた後のEUを支える2大国、フランスで大統領選、ドイツで総選挙が行われる。どちらも新しいトップが就く可能性が高い。中国では、秋に新指導部の人事が決定、習近平政権第2期の幕が上がる。2017年は世界が新しい局面に入り、世界秩序が大きく転換する1年になるのではないだろうか。17年の中国の政治・経済はどうなるのか。(株)アジア通信社 代表取締役社長 兼 『中国経済新聞』編集長の徐静波氏に聞いた。
大きな成果を上げた「反腐敗運動」
――本日は2016年中国の政治・経済を振り返っていただき、17年の展望をお聞きしたいと思います。まずは、16年の中国をどのようにご覧になられますか。
徐静波氏(以下、徐) 16年は中国にとって大きな転換期だったと感じています。その意味は2つあります。1つ目は、4年以上の長きに渡って、習近平主席第1期政権(13年~18年)が注力してきた、「腐敗の取締り」が山場を越えたことです。
習主席は「ハエ(下級官僚)もトラ(高級官僚)も叩く」という、前代未聞の、指導幹部の脱法行為や規律違反を徹底的に取り締りました。そして、この「反腐敗運動」は大きな成果を上げました。さらに、習政権は「キツネ狩り」と称して、公金横領など巨額の不正蓄財を働き、摘発を逃れるために海外逃亡した党幹部の身柄を拘束して送還させる作戦にも乗り出し、15年だけで、600人以上の汚職官僚を海外から国内に連れ戻しました。
これらの「腐敗の取り締り」は今後も継続して行いますが、一段落したというところです。昨年秋の第18回共産党中央委員会第6次全体会議で、党内監督条例では最高指導部も含めた幹部に規律の強化を求め、「党内監督に聖域、例外はない」と明記されました。
「核心」はすべての決定権を握る
徐 2つ目は、習近平主席が「核心」になったことです。このことは、日本の一部のマスメディアでも取り上げられていますが、誤った点もありますので、補足説明させていただきます。中国政治で核心というのは、政治的権威の象徴であり、毛沢東以降、鄧小平、江沢民に使われています。しかし、今回の習主席に使われた核心は、毛沢東を除くと、鄧小平、江沢民に使われた核心と意味が違います。前者2人の核心は、「党中央」の核心であり、習主席は「党の核心」です。そのことを裏づける証拠として、習主席には、もう1つ「領袖」という別の言葉も使われています。(『環球時報』:中国共産党中央委員会の機関紙『人民日報』の国際版)この言葉は、過去に毛沢東(後継した華国鋒)以来40年近く使われていません。
毛沢東は「中国人民の偉大な領袖、同志」と言われました。企業にたとえていえば、「党中央の核心」は取締役会の議長のようなもので、サラリーマン社長、会長でもなれますが、その決定は取締役会に従います。しかし、「党の核心」「領袖」はすべての決定権を握るオーナー社長を意味します。
(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
徐 静波(じょ せいは)
政治・経済ジャーナリスト。(株)アジア通信社社長兼『中国経済新聞』編集長。中国浙江省生まれ。1992年に来日し、東海大学大学院に留学。2000年にアジア通信社を設立し、翌年『中国経済新聞』を創刊。09年に、中国ニュースサイト『日本新聞網』を創刊。著書に『株式会社 中華人民共和国』(PHP)、『2023年の中国』など多数。訳書に『一勝九敗』(柳井正著、北京と台湾で出版)など多数。日本記者クラブ会員。経団連、日本商工会議所、日本新聞協会等で講演、早稲田大学特別非常勤講師も歴任。関連キーワード
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