2024年11月18日( 月 )

2016年伸びた企業 2017年注目企業~JR九州

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多角化で収益確保。鉄道も決算処理で黒字事業化

hakata JR九州は、2016年10月25日に上場を果たした。行政からの実質的補助があったといえ、本業赤字のなか上場を目指す企業はそうない。

 実現にこぎつけたのは多角化の成功があったからだ。民営化後、続々と会社を立ち上げ新事業に取り組んでいった。とりわけ駅ビルと不動産事業が大きく貢献。駅ビル事業は1998年のアミュプラザ小倉を手始めに長崎、鹿児島と次々に開発。開業のたびにスキルを上げて施設の成熟度を高めていった。JR博多シティでは蓄積したノウハウを爆発させて大成功を得た。その後に開業したJRおおいたシティも温泉施設を据えるなど、駅ビルの進化は続いている。

 不動産事業はマンションが当たった。豊富な財力と高い知名度を背景に有力物件の落札に成功する一方で、他社が苦戦したリーマンショック後も確実に供給する地力を見せた。その他事業では、M&Aを活用したJR九州ドラッグイレブンや、FC事業のフランチャイジーになって事業を拡大したJR九州リテールなど業容の拡大手法も多彩だ。

 駅ビル事業は今後熊本と新幹線開通に照準を合わせた長崎の開発が控えている。これまで通り圧倒的な集客力を有する商業施設を作り上げる可能性は高く、増収に大きく寄与するだろう。周辺への不動産開発でもマンション事業は実績を残すはずだ。

 鉄道事業は固定資産減損処理という決算手法で黒字事業化にした。2022年度に開業が見込まれる九州新幹線長崎ルートは、営業収益自体は増加すると見られるが、今回採用されるのは在来線特急と従来の新幹線を武雄温泉駅で乗り継ぐリレー方式。利益面でどこまで貢献するかは不透明だ。建設のために投下される莫大なコストの回収での同社の負担度も注目される。

 福岡の元気の良さが目立つ一方で、今後は九州全域の過疎化と人口減が本格化する。長崎・熊本の駅ビル開発が一巡すれば駅ビル・不動産の域内での収益はピークを超える。

 域外でどこまで稼げるかが継続成長のカギとなる。あらゆる事業で経験を積んできた同社にとって出店エリアに制限のない飲食事業はその候補になりそうだ。ただし、同事業の16年3月期の売上高は60億円。けん引役を担うには、アジアなど海外でも通用する飲食ブランドになることが求められる。短期での増収を目指すなら、ドラッグイレブンなど小売りの広域展開や新たなM&Aも選択肢となる。

 公開価格2,600円の株価は3,000円台維持が続く。域外での事業の柱の確立が高い評価に応え続ける道となる。

【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
九州旅客鉄道(株)
代 表:青柳 俊彦ほか1名
所在地:福岡市博多区博多駅前3-25-21
設 立:1987年4月
資本金:160億円
売上高:(16/3連結)3,779億8,900万円

 

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