2024年12月22日( 日 )

二重の制度ミスが招く再エネ100%への遠い道(1)

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認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長 飯田 哲也 氏

 経済産業省は原発がらみの新しい制度を次々と打ち出しており、2017年は再生可能エネルギーにとって転機の年になるかもしれない。だが、そこには問題がないのか。再エネ問題の第一人者である認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏に、現状と課題について分析してもらった。

(聞き手、文・構成:大根田 康介)

非化石新市場が進まない2つの訳

 ――2016年11月、経済産業省と資源エネルギー庁が「非化石価値取引市場」の制度設計の議論を進めると打ち出しました。「非化石電源」には、原子力発電、水力発電、再生可能エネルギーが該当し、その比率を30年度に44%以上にするため「非化石価値」を証書化し、取引する新市場をつくる、という話です。これについてはどう考えますか。

 飯田 実は「非化石価値取引市場」については、あまりにばかばかしくて詳しく見ていません。昔、「グリーン電力市場」という同じようなものがありました。制度設計まではやるにしても新市場として活性化せず、結局前に進まないでしょう。

 その理由は、そもそも固定価格買取制度(FIT)における<環境価値>の整理がされていないからです。<環境価値>は「再エネ付加価値=CO2排出削減価値」と言い換えられます。

eco_img これは私もずっと指摘していますが、今のFIT電力は“電力会社が負担する<回避可能原価>+全国民が薄く広く負担する<環境価値>を含む<再エネ賦課金>”という“2階建て”です。そして経産省は「<環境価値>は全国民に帰属するため、電力会社が再エネ電気であることを付加価値とした表示・販売を認めるべきではない」、つまり再エネも原発も同じ電気として扱う制度をつくろうとしているわけです。

 FIT制度では、<再エネ賦課金>は理論上いずれゼロになるものです。現行制度のままでは<環境価値>=「再エネ付加価値」もゼロになってしまうのです。ここが最初のボタンの掛け違い、つまり制度設計の間違いなのです。

 <再エネ賦課金>は、電力会社にとって全国民からの預り金にもかかわらず、それで再エネを引き取った結果、電力会社のCO2排出原単位が下がります。電力会社は自己負担せず、全国民からの預り金で自分たちのCO2排出削減を進めるという、他人のふんどしで相撲を取る制度設計になっています。

 これは京都議定書の時代に、東京電力が経団連「環境自主行動計画」に沿って「CO2排出削減価値」を「CDM」(※)で毎年数百億円かけてわざわざ海外から購入したことを考えれば、彼らの負担逃れが明らかでしょう。

 それにも関わらず、経産省は「CO2排出削減価値=<環境価値>が全国民に行き渡るからよい」と強弁しましたが、結局は電力会社が国民のお金で得をしているだけなのです。<環境価値>は本来、CO2排出削減の義務を負っていたり、メリットを得たりできる製造業系の大企業などが費用負担すべきなのですが、それを全国民に押し付けました。

(つづく)
【大根田 康介】

(※)クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)の略。先進国が開発途上国において技術・資金等の支援を行い、温室効果ガス排出量の削減または吸収量を増加する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を支援元の国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度。

 
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