ドアのキズで休業補償?実在する「怖いタクシー」にご用心
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中洲バトルロワイヤル
年末年始、何かと飲む機会が増えるシーズン。酒で気分が大きくなっての大盤振る舞いで、翌日、猛省する経験を何度も繰り返す御仁は多いはず。ぼったくりの客引きは、そうした財布のヒモが緩んだ客を待ち構えているわけだが、狙っているのは飲食や風俗だけではない。NetIB-NEWSの愛読者A氏(匿名希望)は、昨年末の体験談を小生に語った。
「忘年会の帰りに中洲でタクシーを拾った時のことです。乗り込んで席に着こうとしたとき、持っていた傘が『カチャッ』とドアに触れて音がしました。行き先を伝えて、タクシーが発進すると、運転手が『傘が車に当たりましたよね』というので、『ええ』と答えました。信号待ちの時、運転手に傘を見せると、『金属製ですね。塗装が剥げることがあるのですよ』と言います。そして、再びタクシーが走り出すと『私たち、修理代だけでなく、1週間くらい休業補償もかかるので、結構な金額になるのですけどね』と言ってきたのです」
A氏が利用したのは個人タクシー。運転手は、60代半ばくらいの男性。「人相や目つきが悪いわけでもない。普通の人でしたが・・・」と印象を語る。気の合う仲間と酒を酌み交わし、気分良く酔っていたA氏であったが、「休業補償」、「結構な金額」という具合の悪い言葉に酔いが醒めた。
「怖くなって、家から少し離れたコインパーキングの前で止めてもらいました」とA氏。車から降りると、その運転手は、懐中電灯を持って後部ドア付近を注意深くチェックし始めた。「私も確認しましたが、結局、傷は見当たらず。一件落着かと思いきや、運転手は『念のため、携帯電話の連絡先を教えておいてください』と言い出したのです」
後で、「よく調べたら、傷がありました」ということになってはいけない。A氏は、「教えません。ここで今ケリをつけてください。後で何か言われても、あなたの言うことを確かめられないじゃないですか。今しっかり確かめてください」と伝えた。運転手は憮然とした表情で、もう1度、懐中電灯で車の塗装をチェック。傷をA氏に示すことができず、その場を走り去っていったという。
おそらく、運転手は、相手の人物を見て実行に移したのだろう。告げられた行き先は、地価が高いことで有名な住宅街。定年まで実直に勤め上げ、現在は悠々自適の生活を過ごすA氏は、見た目・雰囲気からもその余裕が伝わる人物だ。「行き先を聞き、こちらが面倒な話を嫌がることを見越して、数万円程度の示談で済ませようとする手口だったのでは…」と振り返るA氏。後日、知り合いのタクシー業者に、この体験を話したら、「まだ、そんなことをやる運転手がいたのか」と呆れていたという。
今回のタクシー以外にも飲んだ後のトラブルはいろいろ。他の酔っ払った客から因縁をつけられ、喧嘩をして相手にケガをさせたり、割り勘の支払いを互いに忘れて人間関係を悪くしたりという話はよくある話。落とし物や忘れ物も多発する。以前、小生が中洲界隈で拾ったのは、なんと入れ歯。大事な身体の一部を繁華街で落とす情景が、まったく浮かばないが、届けた中洲交番では、警官が、さして驚きもせず、「またか」という様子で受付を行っていた。
家に帰るまでが中洲の飲み。また楽しく飲むために、他人事にせず、用心したいところである。
【長丘 萬月】
<プロフィール>
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。雑誌編集業を経てフリーに転身。よく言えば「現場主義」でひと通りの「ボッタクリ」を取材し(被害に遭い)、蓄積したデータをもとに「歓楽街の安全・安心な歩き方」を勝手にサポート(武勇伝として語るだけ)している。自称「中洲飲み屋のコンサルタント」だが、実際は愚痴の聞き役で最後は店で寝てしまう。腹周りと肝臓の脂肪が気になる今日この頃、それでも中洲に毎日出没する。関連キーワード
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