東芝の命奪う腫瘍、米原子力事業の「のれん」
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100億円弱が数千億円に?
最大7,000億円規模とも言われる巨額損失が、日本の大手電機メーカー(株)東芝(本社:東京都港区、細川智代表執行役社長)を危機に陥れた。問題となっているのは、米原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック社を通じて2015年12月に買収した、米原発建設会社のCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)ののれん(買収した会社の買収金額と純資産額の差額で、無形資産の1つ)である。
昨年末(12月27日)、東芝は、「(原発建設にかかる)コストの大幅な増加により(S&Wの)資産価値が当初の想定を大幅に下回り、必要なのれんの計上額が当初想定の約87百万米ドル(約98.8億円)を超え、現時点で数十億米ドル規模(数千億円規模)となる可能性が生じた」と発表。これが各種メディアで最大7,000億円規模と報じられるところとなった。
2017年3月期第2四半期(16年9月30日現在)における東芝の純資産は6,981億円。ただし、子会社に上場企業が含まれる東芝の非支配持分は3,348億円。株主資本3,632億円をのれんの減損損失が上回れば債務超過となる。東芝は全部を減損とする可能性も示しており、その額が株主資本の倍に近い7,000億円規模となれば、最悪の事態を免れるには、グループ企業の売却など「解体」も止むなしだ。
株主資本に匹敵するのれんのストック
東芝の連結貸借対照表で目を引くのは「のれん及びその他無形資産」。16年3月期は、このうち、のれんが3,372億円。17年3月期第2四半期連結累計期間(16年4月1日~16年9月30日)でのれんの減損損失は計上されていない。のれんを20年以内に償却する日本の会計基準とは異なり、東芝が適用している米国会計基準では、買収した企業の収益性が落ちない限り、のれんの償却をしなくてもよい。今回のS&Wは計上の段階で一気に爆発する形となるが、株主資本に匹敵する巨額ののれんが、東芝を蝕む悪性腫瘍として存在している。
ストックされたのれんの存在を考えると、爆弾となったS&W買収を決断したタイミングは不可解に思える。15年3月期におけるのれんの期末残高は6,585億円。16年3月期に2,949億円ののれん減損損失を計上し、当期純損失4,600億円の大幅赤字につながった。このような時期に、企業買収で巨額の損失を計上したとなれば、その経営責任は極めて重い。
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【山下 康太】
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