カトープレジャーグループ・30年無敗の事業経営者が語る地域再生のカギ(2)
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カトープレジャーグループ 代表取締役 兼 CEO 加藤 友康 氏
九州では、2002年に破綻した公共リゾートを「長崎温泉 やすらぎ伊王島」として再生し、地域の雇用創出、経済の活性化に貢献するほか、インバウンドの富裕層にも好評を博す高級旅館やリゾート施設、意趣を凝らしたレストランなど、幅広く事業を手がけるカトープレジャーグループ。すべての事業で共通しているのは、事業収益まで責任を持つ「トータルプロデュース」の姿勢である。同グループ代表の加藤友康氏に、事業を通じた地域再生をテーマとして話をうかがった。
自社投資で魅力を創出 「地の力」を生かす
――私が「長崎温泉 やすらぎ伊王島」と「唐津 網元の宿 汐湯凪の音」を実際に見て感じたのは、地域密着姿勢の強さでした。雇用では地元採用を行い、地元の商工会や旅館組合にも積極参加していらっしゃいます。そういう姿勢は、御社事業のコンセプトワークのなかに含まれているのでしょうか。
加藤 そうですね。私たちは「チェーンストアの時代は終わった」とよく言っております。どの場所でも同じモデルのビジネスを立ち上げていくことは、あまり好きではない会社です。オリジナリティのある本当に良いものをつくるには、「地の力」が大切です。「地の力」とは、土地の持つ力を活かしながら、そこに住んでいる人々と連動することだと思っています。
――一度失敗したものを成功させるというのは、何か魔法がかけられたようにも感じますが、マーケティングの部分に秘訣があるのでしょうか。
加藤 「やすらぎ伊王島」をプロデュースするにあたり、「トータルプロデュース」の最初のフェーズであるマーケティングを徹底的に行いました。「なぜ、ダメだったのか?」ということをしっかり分析し、「長崎を代表するリゾートをつくる」という1つの大きなテーマがありました。譲渡以前は、東京や大阪から来ていただくお客さまを対象に、エージェントの方々や旅行代理店の方々に集客を頼む普通の旅館のスタイルでしたが、約13年間運営をしていて、単年度で一度も黒字が出ていませんでした。また、夏に特化したリゾートで、夏に大きな集客があっても春、秋、冬は沈み、固定費でオフシーズンに大きな赤字になることがデータとして出ておりました。
次に、お客さまの目線に立った時、東京から伊王島に行くメリットがどこにあるのかと考えました。当然ながら、交通費と時間がかかります。当時は橋がかかっていませんでした(伊王島大橋開通は11年3月)から、長崎港から船で渡ります。わざわざ足を運んだお客さまがご満足いただける施設かどうか。一方、伊王島に海水浴でよく遊びに来られる地域の方々に喜んでいただける施設かどうか。以上を分析すると、「伊王島はきれいでいいけど料金が高い」という声があるなど、マーケットのギャップが出ていたのではないかと思いました。
そこで、施策を大きく転換して新しいスタイルで任せていただいたのが、この13年間です。まず、ターゲットの層を、東京や大阪など主要都市から、長崎県、福岡県、佐賀県の3県を中心に絞りました。それから夏だけでなく、春、秋、冬にもご利用いただける施設にしようと考えました。そのためのコンテンツは、「冬の楽しみは食と温泉」をテーマに、まずは食材の宝庫である長崎の海の幸を前面に押し出しました。そして、思い切って自社投資で温泉を掘りました。この食と温泉の2本立てとマーケティングの視点を変えたことが、成功のポイントだったと思います。
(つづく)
【聞き手・文:山下 康太】<プロフィール>
加藤 友康
1965年、大阪府出身。ホテル、フードサービス、スパ、ラグジュアリーリゾート、公共リゾート、エンターテインメントなどあらゆるレジャー事業の総合的な開発を行うプロデュース企業、カトープレジャーグループの代表取締役兼CEOを務める。22歳のときに父親の急逝により事業を引き継ぎ、代表取締役に就任。現在、日本全国に事業所を展開し、総スタッフ数約3,500名、年間500万人におよぶ顧客を動員している。代表的な事業として「箱根・翠松園」「Kafuu Resort Fuchaku CONDO・HOTEL」「麺匠の心つくし つるとんたん」などがある。主な著書に、「経営者が欲しい、本当の人材」「世界一楽しい仕事をしよう!KPG METHOD」(ワニブックス)がある。関連キーワード
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