中国経済新聞に学ぶ~アサヒ農業事業はなぜ中国で失敗したのか(後)
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規模のボトルネック
北京、上海のスーパーマーケットにおいて、イチゴの販売価格はキロあたり320元(約5,440円)に達し、中国での最高記録となった。スイートコーンの小売価格は1個8元(約136円)と、国内の同等製品の数倍となった。牛乳のリットル換算での価格は、国産の高級牛乳の2倍以上の20元(約340円)を越えた。
アサヒグループの野菜や牛乳は「天価」と呼ばれたが、高級市場が急速に発展する中国において、この高級農産物は供給が間に合わないほどの需要があった。朝日緑源は当初、利益回収までの終期を5年と見込んでいた。2011年はこの利益回収のターニングポイントの年であり、この後にはさらにプロジェクトを200haほどにまで拡大する計画もあった。当時のアサヒビールの最高顧問・瀬戸雄三氏は莱陽の農業プロジェクトに多大な期待を寄せており、このプロジェクトが手本として成功すれば、中国国内で同様に20~30カ所のベースを作りたいという意向を示している。
しかし、朝日緑源のある経理担当者が記者に語ったところによれば、2015年末の時点で朝日緑源は未だに深刻な赤字を抱えており、2016年はなんとか同水準を保てる程度の見込みであるという。企業全体の生産規模は拡大しておらず、現在の収入は年1億元(約17億円)ほどにとどまっている。「朝日緑源がずっと赤字状態である大きな理由は、規模のボトルネックを越えられないからだ」。朝日緑源の監事でもある孫英豪は、農薬は典型的な規模経済であるという。現在の生産規模からみれば、企業の黒字化は難しい。しかし、もし栽培規模を拡大するとなれば、土地がまた大きな制約となる。
2013年、アサヒが農業専門家を組織して実行可能性の研究を始めた際、山東省の章丘、莱陽などの8カ所の農地において、土地、水、土壌などの環境基準について20年以上の考察を行っている。
「検査結果によれば、8カ所の農地の土壌はいずれも環境にやさしい作物を育てるための要件を満たしておらず、最終的に選ばれた莱陽・沐浴店鎮でも駄目だった。そのせいで土地作りに何年も費やすことになった」と孫英豪は語っている。「とくに問題なのが、ここは土地が肥沃であるにもかかわらず化学肥料を使いすぎて、土の質が退化していたことだ」と朝日緑源の総経理・乾佑哉は指摘している。「しかし、ここの農民はあまり気にしていない。自分の土地ではないからだ」
当初、朝日緑源には乳牛を飼育するプロジェクトはなかったが、牛糞で土地を改善するために後から朝日緑源乳業を設立した。「適切な土地が見つからなければ、どうやって栽培規模を拡大するんだ」、と孫英豪は語る。「中国のほとんどの農地はもう汚染されてしまっている」。規模効果がなければ、朝日緑源の黒字化の宿題や、アサヒグループの手本を普及させる計画も語りようがない。最終的に2016年末、アサヒグループは長年にわたって投資したが利益を回収できなかった2社を、中国新希望グループに売却し、中国での農業事業にピリオドを打った。
(了)
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