2024年11月18日( 月 )

熾烈な競争が予想されるNAND型フラッシュメモリ市場(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 フラッシュメモリとは、機器の作動中に電源が切れても、データが消えないメモリである。フラッシュメモリは、スマートフォンやタブレットPCなどバッテリーを使っているモバイル機器向けの記憶装置に使われるもので、その需要はますます増加している。それに、携帯端末はリアルタイム処理を必要とするデータが増えているし、機器もますます軽量・薄型になる傾向があり、記憶装置の大容量化が求められている。

net-min その大容量化を実現するために、今まではセルのサイズを小さくすることで、大容量化を進めてきた。
 ところが、セルのサイズを小さくする回路の微細化技術は、10ナノの半ばまでは良かったが、これ以上は限界という現実の壁にぶつかるようになった。なぜかというと、セル同士の距離が近づくことによって、セル間に干渉現象が発生し、隣のセルのデータ処理に影響をおよぼしたり、データの処理が不安定になったりすることが起こったからだ。
 そこで新しく開発された技術は、従来のようにセルを平面に並べるだけでなく、垂直に積層させることになった。すなわち「3次元NAND型フラッシュメモリ」の誕生である。3次元NANDフラッシュは発想の転換で、今までと違ったかたちで大容量化を実現できるようになったし、空間をうまく活用できる画期的な技術だ。ただ、3次元NANDフラッシュの生産技術は、かなり難易度が高いようだ。

 この3次元NANDフラッシュのコンセプトを最初に考案した会社は東芝であり、現在64層の3次元NANDフラッシュを世界でいち早く量産化したのは、サムスン電子である。

 最近、サムスン電子の好業績を牽引しているのは、3次元NANDフラッシュの量産成功である。サムスン電子は3次元NANDフラッシュの営業利益としては16年第3四半期に初めて1兆ウォンを上回るようになったし、16年第4四半期には1兆6,000億ウォンの営業利益を叩き出している。
 サムスン電子は今後の需要増大に対応するため、平澤(ピョンテク)に世界最大規模の半導体団地を15兆ウォンの投資で造成した。需要増加にぴったりの稼動である。

 一方、NAND型フラッシュメモリは大容量化が実現され、SSD(Solid State Drive)という記憶装置にも多く使われている。SSDは既存の記憶装置であるハードディスクドライブに比べ、サイズが小さくて軽く、衝撃に強く、データ処理速度もHDDに比べ数倍速い。ただ、価格はHDDと比較して10倍ほど高かったが、価格も2.5倍程度に格差が縮まってきており、SSDはHDDを徐々に代替しつつある。

 それだけでなく、人工知能(AI)とビッグデータ、IoTを活用した家電製品とサービスが急増していて、NAND型フラッシュメモリの需要は、今後急伸することが予想されている。自動走行自動車分野もNAND型フラッシュ需要急増の1つの要因である。

(つづく)

 
(後)

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