人気ラーメン店「一風堂」がマザーズ上場。初値を予想!(前)
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博多ラーメン「一風堂」を運営する(株)力の源(ちからのもと)ホールディングス(本社:福岡市、清宮俊之社長兼COO)は3月21日、東証マザーズ市場に上場する。上場にともない、80万株を新規発行、創業者で会長兼CEOの河原成美(しげみ)氏が保有する20万株を売り出す。1株当たりの想定価格540円で計算すると、時価総額は約60億円。初値を予想してみよう。
商品の横流し事件が人生の起点
河原成美氏(64)は、立志伝中の人物として有名だ。1952(昭和27)年12月18日、福岡県の城島町(現・久留米市)で4人兄弟の末っ子に生まれた。父親は高校の美術の教師。中学、高校時代は漫画家を目指す。九州産業大学時代には、マンガの延長で役者を志す。上京して「前進座」という劇団に所属した。役者で食えるはずもなく、福岡に戻り、スーパーのユニード(後にダイエー)に入社、西新店で衣類や雑貨の仕入れを担当した。
河原氏は、それからの人生を決定づける事件を起こす。ワル仲間と共謀し、店の商品を横流し=横領した。その額800万円。事件が発覚し、40日間の拘置所暮らし。懲役1年6カ月・執行猶予3年の判決を受けた。25歳のときだ。
嶋田淑之氏のインタビュー『博多一風堂 河原成美物語』(ITmediaビジネス オンライン2009年8月21日付)で、この時の心境を吐露している。
〈警察署で僕の調書を見た父は涙をポロポロ流して「何百人も教えてきたけど、たった1人、自分の子どもを教育しきれなかった」と言って、僕の身柄を警察に托したそうです。そして裁判に証人として出廷したんですが、教師としてのプライドを捨て「すべて私のせいです」と涙ながらに謝っていました。その姿を見て、何ともいいようのない感情がこみあげてきました。〉
父親は、有名進学校である県立修猷館高校の美術の教師を辞めた。父に辛い思いをさせ、人生を狂わせてしまったことが最大の痛恨事だった。これが、人生に目覚める転機になったと語っている。
清潔なおしゃれな店と、豚骨の臭みを消した味で繁盛店に
79年、河原氏は26歳のとき、パブ「アフター・ザ・レイン」を始めた。博多駅裏の6坪の店だったが、店をやるからには、もう芝居の話はしない、店を休まないと決めた。
パブが軌道に乗り、ラーメン店をやろうと思い立った。全国ラーメン店を約1,000店食べ歩き、長浜にあった「長浜一番」という店で働いた。給与をもらうのではなく、100万円を支払っての修業だ。85年、河原氏が32歳のとき、大名路地裏に10坪の一風堂を開店した。
「怖い・臭い・汚い」と言われていた80年代の博多ラーメンのイメージを覆し、女性でも単独で入りやすいようにジャズを流し、おしゃれな店をつくった。たちまち繁盛店となった。豚骨特有の臭みを消しながらも濃厚な深みがあるスープや、研究を重ねた自家製麺が特徴。コクと深みのある「赤丸新味」やサッパリした豚骨味の「白丸元味」は看板商品だ。
94年、「新横浜ラーメン博物館」に出店。97年からテレビ東京の「TVチャンピオン~ラーメン職人選手権」で3年連続ラーメンチャンピオンに選ばれ、全国区のブランドになった。
(つづく)
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